あれから、十数年が経った ![]()
本来なら、こんなことを。
考える余裕もないほど、仕事の現場から。
現場へと、飛び回っている毎日のはずで。
頭に、詰め込まなければいけないことは。
山ほどある。
だけど今は、小休止。
自宅待機中の、おれのマンション。
昨日から読みふけっていた漫画も飽きて。
「 んぁ~! からだナマってんなぁ~ 」
ジムにも、行けねぇーしなぁ~ ![]()
と、おれは肩甲骨をグリグリと動かす。
「 よしっ! 」
と声に出し、おざなりになっていた。
部屋の中を片づけたら、少しだけ。
風通しが、よくなったような気がした。
おれが、もう一度。
「 よしっ! 」
と仁王立ちで、うなずくと。
ソファの上に、うずくまっていた ![]()
愛犬のBonnieが、ピクリと耳を立てた。
こいつがいるおかげで、今日みたいに。
一日中、誰とも話さないような日でも。
自分の声を、忘れるなんてことはない。
「 Bonnie リード持ってこい! 」
彼女は、カギの束の音に素早く反応し。
定位置に置いてある、リードをくわえ。
玄関の前で、しっぽを振って待っていた。
ペット可の、このマンションの屋上には。
住人専用の、小さなドッグランがあって。
いつもは犬の他にも、隅の方で丸くなり。
日なたぼっこ中の猫や飼い主さんもいる。
けれど今日は、警戒なのか遠慮なのか。
屋上に出るドアのカギは掛かったままだ。
おれは。
マスクを外して木製のベンチに腰掛けた。
ミネラルウォーターのキャップをひねり。
愛犬…じゃねぇーわ。
愛おしい Bonnie の、赤いリードも外し。
普段よりも長く、人工芝の上で遊ばせた。
彼女の身体には、体内時計があるらしく。
時折、おれの足元に寄ってきては ![]()
「 まだ、帰らなくてもいーの? 」 と。
確認するような顔で、見上げたりもする。
部屋に戻ってきて、水を飲ませたあとも。
ずーっと、ケージとおれの間を。
行ったり来たり、うろうろしていて ![]()
今度は。
「まだ、お仕事に行かなくてもいーの?」
って、不思議そうな表情を向けるんだ。
一日中、一緒にいられることが嬉しくて。
なんだか逆に、落ち着かないみたい。
おれだって、もちろん楽しくて ![]()
おれが選んだ春色の服で身を包む彼女を。
あー、かわいい ♡
ぎゅぎゅーっ!と、抱きしめ。
今日もキスの、攻撃だぁぁーー!! ![]()
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窓の向こうは、太陽が徐々に沈み始めた。
オレンジ色から、マーマレードへと。
刻々と変化していく、空の様子が見える。
夕日を眺めて感動するなんて久しぶりだ。
こんな風に、夕焼けがきれいなときは。
「 明日も、いい天気になるよ 」 って。
昔、おばあちゃんが言ってたっけ。
おれの、この自粛体制が。
たどりたどって、ほんのちょっとでいい。
この空の下のどこかにいる初恋の君への。
腹立たしいウィルス感染を、食い止める。
小さな手段に、なっていますように。
そして、もちろん。
愛すべき今の、大切な彼女のためにも。
必ず守るよ。
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