世の中広いようで狭いというのは本当だ。
開け放したドアの前の廊下を横切る彼と。
ベッド横で、丸椅子に腰かけていた私の。
目と目が、しっかりと合った。
「なんでこんなトコに、いるのぉ~?!」
哀川翔をリスペクトする、ハイトーンと。
私の裏返った奇声が、みごとにハモった。
彼は、ここの病院とも契約をしている。
小さな葬儀会社の、若き社長で。
ちなみに、ウチの遠ぉ~い親戚でもあり。
過去に、二度ほど世話になっていた。
だけど今日は、黒服に白い手袋ではなく。
パンチのきいた、チャラい私服である。
義理のお姉さんが、隣の病室に入院中で。
奥さんと一緒にお見舞いに訪れたらしい。
「 へぇー、すごい偶然だね 」
そこへ巡視に来たのは超明るい師長さん。
彼女にとっての、彼は。
「 葬儀屋さん 」 との、認識である。
「えぇ!知り合いなら早くゆってよぉ~」
と病室内が、さらに騒がしくなった。
師長さんにも、みかんをひとつ手渡して。
全員で、 5 人 ![]()
大雑把な O 型がそろうと宴会場と化す。
自分よりも若い男性が、一人いるだけで。
おばちゃんたちは、舞い上がるのだ。
入院中の母の、唯一の楽しみが。
「今日は僕が担当なのでお願いしまぁす」
と不定期に現れる、看護師くんである。
お世辞でも何でもなく、はっきり言って。
「 顔のかわいい、男のコ~ ♡ 」
は当然、フロア全体のアイドルで ![]()
誰もが毎日、彼の登場を待ち望んでいた。
最初の頃こそ。
シモの世話をしてもらうのが恥ずかしい。
などと言っていた、乙女な母だけれど。
「仕事ですから、気にしないでください」
と相手に気を使わせないひと言に救われ。
それからは、完全に。
彼の爽やかな笑顔に、身をゆだねている。
自分の老後の世話を。
誰に看てもらいたいと、思うのか。
という、世論調査では。
男性が 「 奥さん 」 で、あるのに対し。
女は圧倒的に「イケメン介護士」なのだ。
冗談ではなく、絶対に本心だろ。
mayu.
