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まさか初日から一条に会うなんて。

心臓はバクバクだった。




一条は隣席の客と話しながら視線をゆっくりとこちらに向ける。

私と視線がぶつかり一条のドクンと言う心臓の音さえ聞こえた気がしました。




私は驚きを抑え、強気な態度で目を逸らすと、見せつけるように常連達に笑顔で話しかける等、元気ですアピールに必死だったと思う。





必要以上に明るく振る舞っていたはず。

一条はそれ以降、視線を私に移す事はなく、しばらくすると店を出て行った。




私は勝ち誇った気分でした。

今思うと、ただパチンコ屋でまた働き出しただけなのに、一条が店を出て行った時、ざまーみろ、とか勝った!とか、とにかく幼稚で、挑発的だったと思うのです。




これで一条はもう来ないだろう。来られないだろう。もう本当に終わったんだ!あの広い家で、私から取り上げた家電に囲まれて孤独に晩酌でもしているに違いない。




そう思うと気分が良く、やっぱり戻って来て良かったんだと、そんな風に考えていたと思います。




久しぶりに見た一条は心底気持ちが悪かった。これは女性特有の感情かも知れないけど、別れた途端にめっちゃ気持ち悪くなる例のアレですね。



なんで、この人と?こんなパンチパーマ のオッサンと?なんだか、パンチパーマ が規則正しく整列している様にも腹が立って仕方がなかった。




一条と付き合った理由は自分が一番分かってはいるけれど、それでもこの人と何度もセックスをしていたかと思うと恥のような思いだった。




仕事が終わり店を出るのは大体、深夜1時をまわる。





新しく新居となったのは職場から車で20分ほどの田舎の新築アパートだった。

本当に田舎で、遅番の帰り道には走る車も殆どない。




私は初日の緊張と疲れもありヘトヘトになりながら車に乗り込んだ。

そして桜田さんの私に対する態度に改めて傷つき、もう私と仲良くはしてくれないのかな…そんな事を考えながらの帰路になりました。




何もない一本道を走っている時です。

こんな時間に後続車がいる事に気がつきました。




警察からは一条に新居がバレないよう、必ず寄り道をすること、尾行がないか確認してから帰宅すること等を注意されていたので、念のため、意味のない回り道をしてみることに。









深夜の後続車はピタリとついて来る。

ライトで車種を確認する事は出来ない。




脈が早くなり、血の気が引いて行く。

一条だろうか?そう思うと恐怖でパニックになった。