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私はこんな状況にも関わらず、置き去りにされた車の事ばかりが気になっていました。
車は無言の2人を乗せ広い国道をぐんぐん進み、当てがあるのかないのか、一条は前だけを見つめアクセルを踏み続けるのです。
この後、どうなる、、?
一条の思いなど知る由もなく、ただ重苦しい時間だけが車中に流れていました。
私はまだ、わかっていなかったのです。
一条は私が思う以上に緊迫した精神状態にあったことを。
今思い返すと間違いだらけでした。
今なら分かるんです。
私は一条を利用したのです。
働かず借金ばかり作る夫。
常にお金に苦しんだ結婚生活だった。
こんなはずじゃなかった。
どうして…どうしてなの…
離婚の為に、自分の人生を切り開く為に
私は一条を利用したのだ。
そこには純粋な愛なんてなかった。
常に誠実ではなかったのです。
「天に唾す」
いつか必ず自分に返ってくる。
それを思い知らされるまで、私は一条を舐めていたんです。
車はいつしか国道を外れていた。
両脇を深い森に囲まれた、街灯もない寂れた土の道。
すれ違う車もない。
暗闇に吸い込まれるようにノロノロとした走りは、やがて完全に止められた。
緊張で押し殺すように呼吸をしました。
今までにない恐怖に駆られていたのです。
一条はゆっくりと私の方へ振り返りながら「やり直そう」ポツリと言いました。
暗くて表情が見えない一条の輪郭がこちらを向いている。
私が何も答えずにいると、正面に直り感情を込めずにサラリとした感じで「次の男はどの客なんだ?」と聞くのです。
自分の言葉で火がつき語気は強まる。
「付き合ってるんだろ」
次にこちらを向いた一条の顔を今でも覚えているのです。
身を乗り出して来た一条の顔はまさに「鬼の形相」。
次の瞬間、一条は私に覆い被さり車のシートを倒すと胸を思い切り、痛いほど掴んだ。
「こうされたんだろ!」
一瞬無理やりされてしまうのではと怯えたけれど、それとは全く違っていた。
次に一条が掴んだのは胸ではない。
私の首だった。
上から抑えられた、少しずつ重くなる一条の腕の力。腕をどかそうにも力は緩まなかった。
自分の顔が少しずつ鬱血していくのを感じていた。
殺されるのだろうか…
こんな終わり方なのだろうか…
私の顔にこぼれ落ちた一条の涙が、私自身の涙を巻き込み一緒に流れていった。
あの時、苦しくて掴んだ一条の腕が、とても硬く、びくともしなくて…
もう一条の顔がぼやけてはっきり見えなかった。
気を失いそうだった。
元旦那物語