
僅かに開いたその薄い唇がゆっくりと動く

……アオイ……
どうしてあの時……俺は嘘をついてしまったんだろう
それは3ヶ月前……
「アオイ、悪い話ではないだろう?」
「…………わかったよ。その代わり、ちゃんと約束は守ってくれよな!」
親父と交わされた約束……とある施設に隔離されている男の記憶を取り戻す手伝いをする
見事に成功すれば俺は晴れて自由の身
親の敷いたレールの上ではなく好きなカメラの仕事が出来る
記憶喪失の人間の記憶を取り戻すなんて医学の知識が全く無い俺にどうして?
そんな考えも頭を過ったが今の俺には断る理由は無かった
数日後、迎えに来た施設の職員に連れられてやって来たのは孤島
「………なんだ……この建物は……」
島の奥にひっそりと佇む古い建物
こんな所に記憶喪失の男がいるのか?
建物の中に通された俺はそこで政木と名乗る見知らぬ初老の男と引き合わされた
どうやらこの男が親父に今回の依頼をしてきたらしい
「お待ちしておりました。貴方のお父様には昔からお世話になっておりまして…」
当たり障りのない挨拶のあと衝撃的な事実が語られた
「貴方には今から会うキサラギハルトの恋人という事で会って欲しいんです」
えっ………恋人…………?
その言葉の意味を理解するのに何分掛かっただろう……
「…………えっ?恋人って、そいつ男でしょ!?なに言ってんすか!?」
「大丈夫ですよ。美丈夫な貴方の恋人を名乗っても彼の容姿は見劣りしませんから」
いやいや、そんな事言ってんじゃない!男の恋人役なら普通女に依頼するだろ?
このオッサン、何考えてんだよ……
「無理ですって!俺、ゲイじゃないしっ……って、そいつゲイですか……?」
「いや、違うと思いますが……」
なら尚更なんで男に依頼してんだよ!
「………アオイさん、貴方には拒否権は無いと思いますが……如何です?」
そう……確かに今の俺には拒否権は無い……そいつの記憶を取り戻さなければ俺に自由は無い
「……………分かったよ……やれば良いんだろ……」
成るように成れだ!
俺は覚悟を決めて政木さんと面会室に向かった