詳しい事は伏せられていたがどうやらある事件の鍵を握る男らしい
記憶を失っている為、その事件の真相も闇の中
早急にキサラギハルトの記憶を取り戻したいらしい
「今までにも何人もの相談員がキサラギと対面しましたが全くダメでした……貴方は人懐っこい性格だとお聞きしました。是非キサラギの心を解して記憶を取り戻すきっかけを掴んでください」
人懐っこいって……まあ、確かに初対面でも物怖じしないとは思うけど……恋人を装うんだよな……前途多難だよ
「では、此処からは貴方お一人でお願い致します」
格子窓の部屋の前で看守の男が待ち受けていた
政木さんとはそこで別れて看守に促されながら部屋に入る
薄暗い部屋の中……その奥はガラス張りになっていた
そして、うっすらと見えた人影
俺は覚悟を決めてキサラギハルトとガラス越しの対面をした
「……こ、こんにちは……」
「……………………」
反応が無い……フードを被り俯いたままの男
あれ?……ひょっとして……寝てる?
「……あの………」
「…………………スゥ………」
嘘だろ……マジで寝てやがる
俺は多少呆れながらガラスをトントンっと叩いた
「………アッ………ごめん………寝てた……」
フッと顔を上げた瞬間、不意を突かれたせいかドキッとした
白い肌に蒼い瞳……その端整な顔立ちに思わず魅入ってしまう
「………………君は……………新しい相談員?」
「あっ………えっと…………相談員ってか……俺………」
ここはちゃんと恋人だって言った方が良いんだろうな……
「俺……お前の……恋人なんだけど……忘れちゃったのか?」
俺の言葉にキサラギハルトは一瞬ピクリと反応して俺を見据えた

「……………君……………男だよね?」
「お、おう……見ての通り男だ」
「………………そう……………忘れてごめん………」
なんだ?……男に恋人だって言われても何とも思わないのか?
キサラギハルトは俺に興味無さそうに視線を反らした

「………はぁ………」
えっ……溜め息?……恋人を前にして溜め息かよ?
「あのさ………」
「………あ…………ごめん………えっと………名前…………」
「カガミアオイ……」
「………なんて呼んだら良い?」
「…………アオイって呼んでくれ……その……ハルト」
「うん……わかった……」
無口って言うか……何事にも興味が無いヤツ………それがキサラギハルトの第一印象だった