変な名前のタイ人と悪霊ピー信仰 | 迷えるオッサンの老惨禄

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チェンマイ18年の日誌を中心にやってきましたが、2021年9月帰国、タイトルを変更したいました。

先日当ブログ読者と一杯やった際、タイ人は何であんな変な名前ばかり付けるんだろうと話題になった。

タイ人の名前は本名のほかチューレンと呼ばれる愛称があり、名前は何?(チューアライ)といえば通常はすべて愛称(チューレン)を差し、本名を名乗ることは先ず無い。

ところがこの愛称たるや犬・豚・猿・猫・水牛・蛇・鳥・蛙・蚊・蚤などの動物からウアン(でぶ)・リア(舐める)・トゥー(浮腫んでる)などろくでもない名前ばかりで、間違ってもスワイ(美人)・ナーラック(可愛い)・ディー(良い)・チャラー(賢い)などの良い名前は万に一つもない。

実例を挙げるとPの愛称は「のろま」であるが、本名は「星の枝」と呼び、Pの弟は同様に「でぶ」と「忠誠」という具合に両者には極端な格差がある。

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これを説明するにはタイ土着宗教ピー信仰について知らねばならない。

タイは仏教王国であるが王国の成立する13世紀以前は土着のアミニズム(精霊信仰)即ちピー信仰がタイ人の精神的支柱として広く浸透してきた。

そのため仏教国教化後もピー信仰は廃れることなく存続し、言い替えればタイ仏教はピー信仰と仏教が融合した民族宗教ともいうことが出来る。

ちなみにタイ人の各家庭やマンション・ホテル・工場などあらゆる建物の入口にはピーを祀る祠(サーンプラプーム)があり、毎日花を飾り,線香を焚き、食物を捧げてピーが祭られている。

又 タイ人の胸元にはペンダントのようなピーのお守り(クルアンラーン)が下げられ、首からはずすと祟りがあるとして水浴びや睡眠時も体から離すことがない。

*写真は花祭(2月)でのピー・パレード。



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写真左はわがマンション入口、同右は行き付けの酒屋の前にあるピー祠(サーンプラプーム)である。

  ×  ×  ×

一方、ピーは実体は無いがこの世のあらゆるものの精霊で自らの心の中にも存在するが、ピーには善霊と悪霊があって特に後者は災いをもたらすとして怖れられ、この悪霊ピーがタイ人の愛称(チューレン)の命名と関係しているのである。

即ちタイでは誕生した赤子は生後3日間はピーの子供で、生後4日目に初めて人間の子供になると信じられているが、生まれてすぐ死ぬ子は悪霊ピーがとり憑いて連れ去ったと考えられている。

そのためチューレンに動物や悪い名前をつけるのは、この子は悪い子だから連れ去ってもしょうがないよと悪霊ピーの目を欺いて子供を守ろうとするピー信仰の風習から来たもので、役所に届ける本名(良い名前)は人間の子になった4日以降付けられる訳である。

これは乳幼児死亡率が高かった頃の一種の迷信を今も引きずっているともいえるが、それにしても本名が付けられ大人になった後も悪い名前のチューレンしか呼ばれないというのは悪霊ピーの祟りを一生恐れているということであろうか。

そういえばタイではホラー・オカルト映画・ドラマが大人気で、悪霊ピーの出るドラマは毎週末ゴールデンタイムで放送され、全世界のホラー映画を一番見ているのはタイ人じゃないだろうか。

ちなみにPはリングやらせん・呪怨といった日本ホラー映画の大ファンで,楳図かずおのヘビ少女・漂流教室のマンガはすべて読んでいる。

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これは代表的な悪霊ピークラスーで、日中は普通に生活しているが夜になると胴体から頭と内臓だけが離れて飛び回り、唾や痰などの汚物を食べて彷徨う女のピーである。

吐痰を通じて伝承されるそうだから、以前「痰民族」http://blogs.yahoo.co.jp/hsm88452/37832521.html
で書いたがタイ人が痰をしないという理由も悪霊ピークラスーが一役買っているのかも知れない。