父が警察署に運ばれ、放心状態の私たちが父の家の玄関先でボ~っとしていると、

そこへ捜査グループの副班長さんらしき男性がやって来た。

柔らかい雰囲気のその警察官に、私は一時的な心の拠り所を求めたのだろう。

その人相手にペラペラと話し出した。

「父とは25年別々に生活していて、連絡も全然とっていなかったので…

今日はじめて父がこんな状態だったと知りました。

自分の親がこんなことになっていたとは夢にも思わなくて…

あまりにも驚いてしまい、今は何も考えられないのですが…

この中で生活していたんでしょうか?生活できていたんでしょうか?

生活していたんですね、きっと。

どう考えても普通じゃない…

実は昨年私の弟が亡くなりまして、そのことで父と会うことが度々ありました。

でも身なりも普通で小汚い感じもないし、会話も普通だし、食事もお酒も普通だし、

「私たちの知っている父」のようでしかありませんでした。

仕事もしてましたし…だから父がこんな中で生きていたなんて、信じられなくて…」。

すると副班長は優しくこう言った。

「お気持ちはわかります。あなたのような人も見てきています。

このような状態になってしまう原因は人それぞれだし、性別もバラバラ。女性も結構多いです。

ゴミ屋敷になってしまう人の多くは社会と関わりを持たずに生きている人で、そういう場合

そのまま孤独死につながることが多いです。そうなると、もっと大変なんですよ。

お父さんの場合は仕事していて、社会との関わりがありましたからね。

すぐに発見されました。

我々が捜査する時は、自殺・他殺も含めた事件性も視野に入れています。

でも、ゴミ屋敷になっている人の自殺はほぼ無しと考えられるでしょう」と。

副班長さんの言葉は、この時の私を大いに慰めてくれた。

 

 

その日から、寝ても覚めても「ゴミ屋敷の図」が私を襲ってきた。

それはきっと母も同じだったと思う。

いや、私より父のことを知っている母の方が受けた衝撃は大きかったかもしれない。

「昔は潔癖に近いぐらいうるさい人だったのに…信じられない…」とつぶやいた。

 

とにかく。

なんとかまずあの家をどうにかしないと。

母と私の戦いは始まったばかりだった。