リスニングを鍛えたいと思う時に、何を最初にやればいいか迷いますね。簡単にはできないと覚悟して易しいものを選んだ方が、長い目で見ると力がつきます。


なぜ簡単にできないのでしょうか?以前お話ししたように、音に慣れていないことが一つ目の原因です。日本語と比べて英語は強弱のメリハリが大きく、弱化した部分がほとんど聞こえないのです。弱化するのは前置詞、冠詞等で、重要な言葉ではありませんが、気を取られてしまうと逆に大切な言葉を聞き逃すことにもなります。特に肯定か否定かを誤解すると大変です。


音の崩れもあります。これは日本語を考えてもわかりますね。「しなくては」が「しなくちゃ」になったり、「なのです」が「なんです」になったりしますね。英語ではgoing toのゴナ、want toのワナが一番知られていますが、他にも多数あります。


2つ目は語彙と文法の問題です。知らない単語は絶対聞き取れません。また、文の構造をマスターしていないと理解しにくいです。読んでいる場合は次の言葉も目に入って、どんな構文か予測できますが、聞く場合はこれまでの言葉だけでこれからどんな言葉が来るか想像しないといけません。それには深い理解が必要なのです。スピードについていけないと感じる人は、たいていは文法力の不足が原因です。


3つ目は訛りの問題です。アメリカとイギリスは発音が違うし、オーストラリア、スコットランド、アイルランド、インド等かなり訛りがきつい英語もあります。最初は一番慣れている発音で、ゆっくり読んでいるものを選ばないと挫折します。


よく英語を勉強している人が、映画を字幕なしで見たいと言いますが、映画のリスニングは最も難しく、それを乗り越える人は僅かです。その理由はそれぞれの俳優の訛りがあり、音楽や効果音が聞き取りには雑音となるからです。逆に易しいのはニュースの英語です。単語を知っていれば、雑音は少なく発音は明瞭です。日本でもNHKのアナウンサーは標準語を話すし、それほど早口ではないのと同じです。


以上のことから、初心者に最も適しているのは、中学教科書レベルで、アナウンサーのような標準語、しかもナチュラルスピードよりゆっくり読んでいるものです。物足りないかもしれませんが、基礎をおろそかにすると早口や自然な会話の聞き取りは決してできないので、焦らないでください。まず自分が読める英語を聞いたときわかるか確かめて、聞こえない時はどこがわからなかったかの分析が必要です。


詳しい分析方法や、中級に進む時の教材等は次回に説明します。