羽生 善治
決断力

これは、将棋の定跡本ではない。将棋の天才棋士羽生善治が一般向けに書いた将棋の心得、人生哲学を書いたものであろう。

ただ、将棋(主にルーツとか以上のプロ将棋の世界)を知らない人でも、ある程度はわかるのであろうし、わかるように細かく解説している。


昔と違い、パソコンによって、情報が瞬時にわかる時代。ある意味では、大変な時代に生きているんだと実感できる。

角田 光代
東京ゲスト・ハウス

日本ではあまり聞き慣れませんが、「ゲストハウス」とは、海外では一般的に利用されている
家具備品完備のマンスリー・ウィークリー賃貸住居のことです。
各部屋は、プライベートの守られた個室。
辞書によると、Guest House=“泊まり客用の離れ”、“高級下宿”とのこと。


まあ、こういうことは、どうでもいいことだろう。アジアの貧乏旅行に出てくる素泊まりの雑居したホステルのようなイメージだろうか。わかりやすく言えば、ユースホテルのよなところだろう。

1泊300円程度で、何週間泊まれる間借りの部屋だろう。


アジアの放浪旅行を終え半年振りに日本に戻ったたアキオ。成田空港から恋人マリコに電話したところ、電話に出たのは、知らない男だった。

旅の途中で知り合った暮林さんに電話をしたら、1晩300円で泊めてくれることになり、そのまま、ずるずるとそこにいることになる。

その旅館は、暮林さんが亡くなった祖母の意思を継いだ”旅館”=東京ゲストハウスであった。そのには、アダルトビデオの宣伝文を書く暮林や行動が不信なヤマネ、アジアカップルなフトシとカナなど次から次に人が来て、そこは、アキオが旅行したアジアのゲストハウスの再現となっていく。


人はなぜ旅に出るのか。日常のありふれた生活に耐えられなくて、放浪旅行に出かけるが、再び戻って帰国しても、そのした若者には居場所がないのかもしれない。フリーターと称して、お金をためては旅行する人もいれば、アキオのようになんとか前の生活に戻ろうとするが戻りきれない若者もいるのだろう。

そうした若者を心地よく描いた小説だろう。

川上 弘美
センセイの鞄

川上弘美」とい小説家の魅力が存分の発揮されたベストセラー。

先生」でもなく、「せんせい」でもなく、カタカナで「センセイ」だ。

この出だしは、実にさりげなく、読書を引き込んでいく。

確かに、相手の名前がわからない時、「センセイ」と読んでごまかすことは良くあるし、「センセイ」と呼ばれて気分が悪い人は、いないんだけど、どこか、軽くからかわれている気分にもなる。でも、学校の先生の場合は、「センセイ」と呼び慣れているから、そんなに抵抗がないのだろう。


ツキコさんも魅力的に描かれる。一人で居酒屋にきて、注文するメニューが、「まぐろ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょう」だ。まさに、酒の肴じゃないか。歳は37歳。「今年いっぱいはまだ三十七です。」

センセイとは30と少し離れているらしい。


実は、最初の章「月と電池」にこういう紹介が書かれているのに途中では、忘れてしまい、センセイとツキコさんの歳を想像してしまう。


二人の”おつきあい”なんだかほのぼのしい。ゆっくりした時間、それでいて、限られている時間。そうした時間が、読む人にホンファカした気分を味あわせてくれる。人生は歳をとっても、素敵な恋が出来るんだというメッセージ、希望みたいな気分を読書にさせてくれる。


センセイの鞄が小説の随所に登場して、小説のまさに主人公のような働きを見せてる。センセイと常に行動する鞄は、まさにセンセイの分身であり、センセイとツキコさんの”お付き合い”の歴史を語ってくれる存在なのだろう。


小説の中に出てくる「伊良子 清白」の孔雀船―詩集 」の詩は、読んでみたくなった。センセイが詩にどんな思いをこめていたのかをもっと知りたくなったのだろう。


奥田 英朗
イン・ザ・プール

ひさしぶりに、大笑いした小説だ。


それにしても、人の不幸を笑ってはいけないが、何れも劣らぬ、神経症を患ったばかりに、「医学博士・伊良部一郎」にあってしまう不幸に遭遇する。この不幸は、必ずしも本当な不幸ではなく、幸せな不幸だろう。

でも、まともな治療でよくなる保障は全くない。結果オーライとしかいえない治療方法だ。

いきなり、総合病院地下にある診察室に入ると、、伊良部先生と茶髪の看護士マユミちゃんが待ち構えている。面談もそこそこ、いきなりビタミン注射だ。これは痛そうだが、伊良部先生がする唯一の治療だろう。


相談者もユニーク。編集者、営業マン、コンパニオン、高校生、ルポライターなど。原因もひとぞれぞれだ。でも、一度伊良部先生の顔を見ると、いつのまにか伊良部先生の顔を拝まずにはいられなくなる。


でも、伊良部先生は、本気で病気を直そうとする気があるのかを疑わせながら、相談者の悩みに自らはまっていく姿が、おかしく笑える。相談者も、その先生の勢いに負けて、いつのまにかおかしくなり、気がつかないうちに直っていることもあるが、ますます悪くなって、笑うに笑えない人も出てくる。


「イン・ザ・プール」は、こころの底から笑える小説だ。



無人島に行くって、基本的に事前予想できない設定じゃないと、これって、どうなんだろうか。

そもそも、カヌーで漕ぎ出す時に、本を持ってないと、無理じゃない。

なんて、考えてしまうよね。

これって、屁理屈なんだろうけどね。


きっと、「何度読んでも飽きない本はなんだろうか。」ってことなんだろう。


思い当たる本は、ケン・グリブウッド「リプレイ」だろうか。

ニューヨークの小さなラジオ局で、ニュース・ディレクターをしているジェフは、43歳の秋に死亡した。気がつくと学生寮にいて、どうやら18歳に逆戻り。この繰り返しが永遠に続くのだろうか。

実は、この本はかなり前に読んだことがあり、もう一度読もうと思っているのだが、本箱から、この本が見つからない。以前、ぼろぼろになった「リプレイ」を持ち歩いていた外国人の教師がいた。代々読みつがれていきたのだろうか。

昼から、ひさしぶりに、本の整理をしてみたいなあ。きっと、面白い本が見つかりそうだ。そして、できれば、「リプレイ」が見つかるといいが・・・

杉山 高之, ケン・グリムウッド
リプレイ

いつも旅のなか

全部で24カ国。

直木賞作家の旅エッセイである。旅が数少ない趣味という著者の旅の軌跡でもある。

すごい。24カ国か。それも、一人旅から、友人との旅行、パック旅行までをこなす。

1ヶ月、異国で生活するような旅行は、憧れるけど、サラリーマンになかなか出来ない。

異国で友達を作り、その男友達を遊ぶようにして、観光し、食事をしながら生活するって、かなりのバイタリティだなあ。

巻頭で写っている写真の表情は本当に自然でなんか溶け込んでいる感じがする。

以前、モロッコ旅行記で読んだあとがきが本当に面白かったんだけど、あとで名前を見たら「角田光代」だった。たぶん、本当に旅行が好きなんだなあ。角田さんは・・・

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荻原 浩
明日の記憶

最近、記憶力が悪くなったと感じることは誰にでもあることだろう。

しかし、自分自身があの元アメリカ大統領もなった病気アルツハイマーになると考えて人はいないだろう。

最近、小説やテレビでもアルツハイマーを取り上げられることがあるが、どちらかというと介護者の大変さを描くことが多いが、自らがアルツハイマーとなり、自分でなくなることへの恐怖心を描いたの小説を始めて読んだ。

50代の広告制作会社の営業部長。娘は、もうすぐ結婚し、孫も生まれる。人生がばら色のように思えるサラリーマン男性に突如宣告された若年性のアルツハイマー。それは、癌であること宣告されることよりも、ある意味では辛いことであった。自分が自分でなくなること。愛する妻や娘の顔がわからなくなること。だんだんと子どもに戻っていくことであった。

人間は、誰しも、年とともに赤ちゃんに行く。ある意味では自分で出来ることが減っていく。それに行くまでに、ある程度の時間があれば、納得も出来るだろうが・・・

もし、自分がアルツハイマーになったとしたら・・こう想像しながら、読むと本当に怖い気がした。

もちろん、それを支える家族はもっと辛いだろうなあ。そこは、あえてさらりと書いている。でも、これ以上書かれると、辛くて読めないのかもしれないなあ。

奥田 英朗
空中ブランコ

不思議な小説だ。この本は、なんと、直木賞を受賞している。

主役は、伊良部という精神科医とその助手の看護婦マユミちゃん。どうも、この精神科医は、人気がないらしく、いつ行ってもお客がいない。だから、先生は、患者とゆっくりと付き合える。これが治療にはとてもいいようだ。それにしても、患者は先生のところに来ると、必ずビタミン注射を打たれてしまう。これはあまりにもひどすぎる。半ば強制的だ。これは、絶対に違法な行為だろう(笑)


さて、この精神科医を訪れる客は、いずれも第一線で活躍している人たち。本人は自覚しないが、少しつづ衰えを感じながら、後輩の追い上げにどこかプレッシャーを感じている。そして、誰にも悩みを打ち明けられずに、どこか孤独で神経質な人たちだ。


そして、普通の精神科医ではない伊良部先生のところに吸い寄せられるようにやってきて、そのまま毎回ビタミン注射を打たれる羽目になる。伊良部先生のどこかまじめでどこか不真面目な人格に触れることで、いつしか彼らの病気が感知していく様を通して、読者にカタラシスを与えてくれる。


作者の奥田英朗作品を読むのは、3作目。いままでは、文庫分だったので、この本も文庫まで待とうと思ったが、何となく購入した。どこかにハチャメチャなところが、奥田作品らしいだろう。テレビドラマ化されて、伊良部先生を阿部寛、マユミを釈由美子がやっていたのを見たので、少しそのイメージがあったが、小説の伊良部先生は、阿部寛のようにスマートでかっこよくはなく、巨体でブ男だ。そこが、まさに親しみをもてるキャラクターなのだろう。

著者: 山田 宗樹
タイトル: 嫌われ松子の一生 (上)

映画化。主演 中谷美紀の帯を見て買った。

題名からして、一体どんな話だろうか。

いきなり、松子の死亡記事。

嫌われ松子は嫌われたまま死んでしまうのか。


松子は、福岡の中学校教師であった。いきなり、校長と修学旅行の下見に行き、セクハラまがいの行為を受ける。

実はこの時点で、読むのを辞めようかと思った。先が見えすぎだと思ったが・・

その後、修学旅行で万引きをした生徒をかばってから、転落につぐ転落の人生を送ることになる松子。

まず、せっかく得た教師の職を辞職し、実家を飛び出す。同棲を始めたさえない小説家志望男は自殺する。その友人の愛人となるも続かず、中州のトルコ嬢に身を落とす。そこで知り合った男と一緒になろうとするが、結局騙されて、その男を殺してしまい、服役。その後、美容師に転身する。そこで、やくざになった教え子を愛してしまい、同棲する。覚せい剤。2度目の服役・・・


松子の不幸の始まりは、障害のある家庭の悲劇なんだろうか。妹ばかり気にかける父。その父から愛されたいが故に教師となる。その後の松子の一生は、常に愛されたいがために自らを犠牲になっていく。求めているのは小さな幸せなんだろう。松子の愛は、その強さゆえに男性が逃げ出していくのだろうか。

結局松子は誰からも愛されなかったのだろうか。


その好対照な存在としての明日香。恋人笙とではなく、自分の行き方をはっきりと持った明日香は、他力的な”松子”の悲劇は繰り返されない。

そこに新しい女性の姿も感じられた。




著者: 大崎 善生
タイトル: パイロットフィッシュ

「パイロット・フィッシュ」とは・・

水槽の新規立ち上げ時など、水質が安定しているか、または魚を飼育する環境となっているか、確認するためにとりあえず泳がせてみる魚のこと。テスト・フィッシュとも言う。


19年ぶりに初恋の女性由起子から電話があった主人公山崎は、エロ雑誌の編集者。

初恋の人とは、山崎がアルバイトを捜して道に迷った末に立ち寄った喫茶店での出会いからであった。

それからも、決断のできない山崎を後ろを押した由起子との関係は、ずっと続くのであろうか。

しかし、二人の共通の友人の不幸な出来事がきっかけで二人は、別々の道を歩くことになる。

人生のターニングポイントとは。出会っても、結局分かれてしまう運命にあるのが、人間の宿命なんだろうか。

19年ぶりの再会は、二人と関係の終止符でもあったのであろうか。

人は別れていても通じ合えるのだろうか。少し、おとぎ話のような話は、泣かせるかもしれない。でも、泣けないなあ。個人的には、そこまで大切な人と別れてしまうのはあまりにも辛すぎるような気がする。

二人の不思議な関係を思うと、この本の余韻にしばらくはひたれるだろう。