奥田 英朗
空中ブランコ

不思議な小説だ。この本は、なんと、直木賞を受賞している。

主役は、伊良部という精神科医とその助手の看護婦マユミちゃん。どうも、この精神科医は、人気がないらしく、いつ行ってもお客がいない。だから、先生は、患者とゆっくりと付き合える。これが治療にはとてもいいようだ。それにしても、患者は先生のところに来ると、必ずビタミン注射を打たれてしまう。これはあまりにもひどすぎる。半ば強制的だ。これは、絶対に違法な行為だろう(笑)


さて、この精神科医を訪れる客は、いずれも第一線で活躍している人たち。本人は自覚しないが、少しつづ衰えを感じながら、後輩の追い上げにどこかプレッシャーを感じている。そして、誰にも悩みを打ち明けられずに、どこか孤独で神経質な人たちだ。


そして、普通の精神科医ではない伊良部先生のところに吸い寄せられるようにやってきて、そのまま毎回ビタミン注射を打たれる羽目になる。伊良部先生のどこかまじめでどこか不真面目な人格に触れることで、いつしか彼らの病気が感知していく様を通して、読者にカタラシスを与えてくれる。


作者の奥田英朗作品を読むのは、3作目。いままでは、文庫分だったので、この本も文庫まで待とうと思ったが、何となく購入した。どこかにハチャメチャなところが、奥田作品らしいだろう。テレビドラマ化されて、伊良部先生を阿部寛、マユミを釈由美子がやっていたのを見たので、少しそのイメージがあったが、小説の伊良部先生は、阿部寛のようにスマートでかっこよくはなく、巨体でブ男だ。そこが、まさに親しみをもてるキャラクターなのだろう。