ふす

ホルムズ海峡

 

イラン戦争勃発から2週間の節目を迎える中、イラン、イスラエル、米国の指導者は13日、徹底抗戦の姿勢を示す中、予断を許さない状況が続いています。

 

今回はこのイラン戦争が、世界経済が壊滅的な状況に追い込まれる前に早期終結するのか。それとも、戦争が長期化するのかについて占ってみたいと思います。

 

まずは、今後のイラン戦争を占う上で、最も重要な視点であるトランプ大統領の政治手法について整理してみます。

 

1. トランプ流の政治手法

 

ドナルド・トランプの政治手法は、従来の政治的慣習を覆す独自のスタイルに特徴があります。2024年の大統領選を経て第2次政権(2025年1月〜)が本格始動した現状を踏まえ、その主な特徴を以下のように分析します。

 

(1) 「ディープステート」への対抗と行政権の強化

(2)  デジタルメディアによる直接的な世論形成

(3)  取引型(トランザクショナル)な外交・経済政策

(4)  社会的分断の加速と二極化

 

この中で、外交への影響が大きい「取引型(Deal)外交」についてもう少し詳しく説明します。

これはイデオロギーや同盟関係よりも、具体的な利益(Deal)を重視する外交です。

 

•             経済的保護主義

 関税を交渉のカードとして使い、他国から譲歩を引き出す手法をとります。2025年以降も、大型減税の継続や保護主義的な貿易政策が経済の底堅さを支えるとの予測があります。

 

•             孤立主義的な外交

NATOへの批判やウクライナ・イスラエル情勢への介入に消極的な姿勢を示し、「アメリカ・ファースト」を徹底しています。

 

理念なき戦術」というトランプの「独特の性格」は、政治学で「マッドマン・セオリー(狂人理論)」とも呼ばれます。予測不能な振る舞いで敵を威嚇する一方、その実態は非常に現実的(トランザクショナル)であり、自分の首を絞めるような長期戦や経済崩壊は、彼のプライド(支持率とそれを左右する株価や物価)が許さないはずです。

 

第2次政権のトランプ流政治は、1期目よりも「準備された独断」という性格が強く、制度的な制約を最小限に抑えながら公約をロケットスタートで実現させようとする、より強力な統治スタイルといえます。

 

2.トランプの政治の方向を決定づける重要な指標

 

トランプ氏の政治判断において「

 

・   支持率

・・  株価

・・  物価

 

は最優先のKPI(重要業績評価指標)となっており、現在のイランとの軍事衝突においてもその傾向が顕著です。

2026年3月現在の状況を踏まえた分析は以下の通りです。

 

(1)  指標への過敏な反応と方針の転換

 

トランプ氏は自らの政権の成功を「株価の史上最高値」や「低いインフレ率」で定義してきました。しかし、2026年2月に開始されたイランへの大規模軍事作戦により、これらの指標が軒並み悪化しています。

 

            支持率の低下

直近の世論調査では、イランへの攻撃開始後、支持率は36〜40%程度まで落ち込んでいます。有権者の過半数が「生活が苦しくなった」と感じており、この数字はトランプにとって最大の警戒信号です。

 

•          「手のひら返し」の兆候

実際に、株価が急落し原油価格が急騰(一時はバレル120ドル近くまで上昇)すると、トランプは「戦争はほぼ完了した」「間もなく終わる」といった発言を繰り返し、市場をなだめようと躍起になっています。

 

そしてトランプにとって最も重要な政治イベントが11月に行われるアメリカの中間選挙です。これから半年の間、トランプはこの中間選挙に向けて支持率の回復にむけて、冒頭にのべた政治手法のすべてを最大限に発揮すると考えます。

 

以上が、今後のイラン戦争の行方を占う上での大前提になります。

 

3.今後の注目点

 

(1)経済的コストによるアメリカの早期終結の模索

 

理念よりも「実利」と「見栄え(指標)」を重んじるトランプの性格から、現在の紛争の行方は以下のように予測されます。

 

•             「勝ち逃げ」のシナリオ

 2026年11月の中間選挙を控え、ガソリン価格の高騰は致命的な打撃となります。そのため、決定的な勝利を待たずに、市場が好感するような「停戦」や「勝利宣言」を早期に行い、経済の立て直しに舵を切る可能性が高いと見られています。

 

•          マーケット重視の軍事指導

ニューヨーク・タイムズ紙などは、彼が「市場の動向を常に気にしながら戦争を指揮している」と報じており、軍事的な戦略目標よりも、株価の反発や原油価格の沈静化が終戦のタイミングを決める決定打になると分析されています。

 

以上述べたような早期収束に向けた楽観的なシナリオを描くことができる一方で、次に述べるような懸念材料もあります。

 

(2) トランプの予測不能性

 

「予測不能性」を武器にする指導者の場合、どれほど理屈で分析しても、最後は彼の一存やその場の直感で事態が急転回するリスクが常に付きまといます。

特に今回のイランとの緊張状態においては、以下の「不確定要素」が計算を狂わせる可能性があります:

 

•             偶発的な衝突の拡大

経済的コストを嫌って早期終結を望んでも、現場レベルでの偶発的な攻撃が報復の連鎖を生み、引くに引けなくなるパターン。

 

•             「弱腰」への恐怖

 指標(株価・支持率)を気にする一方で、独裁者や敵対国に対して「弱い大統領」と見なされることを極端に嫌う彼のプライドが、サンクコスト(注ぎ込んだ犠牲)を無視して強硬策を継続させる懸念。

 

•             市場の過剰反応

 停戦の兆しを見せても市場が信頼せず、物価高騰が止まらない場合、さらに過激な手段で局面を打開しようとする「賭け」に出る可能性。

 

まさに「一寸先は闇」の状況であり、経済指標の推移と同時に、彼のSNSでの発信のトーンの変化を注視していく必要があります。

 

(3) ホルムズ海峡の「実質的閉鎖」と世界経済への打撃

 

事態を左右する「イランの出方」と、それに伴う物理的・経済的に事実上の閉鎖状態にある「ホルムズ海峡の封鎖」は極めて深刻な局面を迎えています。

 

•          機雷の設置

イランが海峡に約12個の機雷を設置したとの報道があり、商船やタンカーの通行が停止しています。

 

•          保険の停止

 3月5日以降、当該海域の海上保険(戦争リスク)が適用外となり、運航コストとリスクが跳ね上がったことで、船舶が海峡を回避しています。

 

•         物価や株価への影響

ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、物価や株価へのさらなる悪影響は避けられません。

 

 

(4) イランの反撃の「政治的コスト」の増大

 

一方、軍事的に劣勢なイランは、正面衝突を避けつつ、トランプ氏が最も嫌う「経済的・政治的ダメージ」を最大化させる戦術をとっています。

 

•          エネルギー拠点への脅威

米軍がイラン最大の石油輸出拠点であるハルク島を爆撃したことに対し、イランは「米系企業が関与する地域のエネルギー施設をすべて攻撃対象にする」と警告しています。

 

•          周辺国への火の粉

アラブ首長国連邦(UAE)の港湾施設付近でもドローン攻撃による火災が発生しており、紛争が地域全体に拡大することで、原油価格をさらに押し上げようとする構えです。

 

  ホルムズ海峡封鎖はイランの自爆行為

イランにとっても石油輸出が封じられれば、著しい経済困難を余儀なくされる。

さらに、イランの最大の後ろ盾であり、イラン原油の9割を買ってくれている中国がそれには耐えられなくなる。

 

 

4. 停戦に向けたシナリオの妥当性

 

トランプは現在、「作戦は予定より早く進んでいる」と強調し、いつでも勝利宣言ができる舞台装置を作っています。

一方でイランがホルムズ海峡を完全封鎖する可能性は低いと考えられます。

 

結局戦争が早期に終結する可能性は、イランが「世界経済の麻痺」という実害を確定させるのが先か。中間選挙を前に世界経済が破滅する前にトランプが幕引きを図るかの確率をどう判断するかにかかっています。

 

私は早期終結の可能性(遅くとも4月末まで)の可能性:70% と予測します。

 

しかし、現実は小説より奇なり。

何が起こるかわかりません。