ロシアでは独裁者による恐怖政治や侵略戦争といった長い暗くて悲惨な歴史がありますが、一方で音楽やバレーといった芸術面でも傑出した人材を数多く輩出している国でもあります。プーチンによる無茶苦茶な侵略戦争の影響で、ロシアと聞いただけで芸術面でも何となく毛嫌いする気持ちもありますが、両者は切り離して考えるべきだとも思います。

 

今回、ソ連の作曲家ショスタコーヴィチが1950年代に作曲した『セカンド・ワルツ(The Second Waltz)』をクロマチックハーモニカで演奏してみました。スターリンによる独裁と恐怖政治が終焉を迎えたとはいえ、まだ暗い世相の残る1950年代半ばに作曲されました。華やかさの中に物悲さが漂う不思議な魅力をもった曲です。

クロマチックハーモニカ、オーボエ、ビオラ、チェロ、ピアノのアンサンブルで演奏しました。よかったらお聴きください。

 

・アレンジ&伴奏音源:自作

・楽譜作成ソフト:Drico Element 5

・ハーモニカ:HOHNER Super 64X

 

 

〇 曲について(出典:世界の民謡・童謡)

『ワルツ第2番(The Second Waltz)』は、ソ連の作曲家ショスタコーヴィチ(Dmitri Dmitriyevich Shostakovich, 1906 - 1975)が1950年代に作曲した『舞台管弦楽のための組曲』の一曲。1956年のソ連映画「第一軍用列車」のために作曲された。

『ジャズ組曲』第2番(1938年作曲)の一曲として紹介されることもあるが、『舞台管弦楽のための組曲』とは別の組曲。

スタンリー・キューブリック監督による1999年公開の映画「アイズ ワイド シャット(Eyes Wide Shut)」では、この『ワルツ第2番(セカンド・ワルツ)』が劇中曲として用いられた。

(雪解けの時代とセカンド・ワルツ)

『ワルツ第2番(セカンド・ワルツ)』が作曲された1950年代半ばは、東西の冷戦状態が緩和の方向へ大きく動いた「雪解け」の時代だった。

1953年のスターリン死去後、ソ連の最高指導者となったフルシチョフによって1956年に「スターリン批判」が行われ、スターリン時代の独裁と恐怖政治は終焉を迎えた。

スターリンの死に合わせるかのように、ショスタコーヴィチは第9番を最後に中断していた交響曲の作曲を再開。スターリンによる粛清を恐れて封印していた交響曲第4番も、作曲から数十年ぶりにこの頃に初演が行われている。

(クレズマーの影響)

NHK交響楽団Webサイトによる解説によれば、『ワルツ第2番(セカンド・ワルツ)』は、東欧系ユダヤ人の音楽「クレズマー(クレズメル/クレッツマー)」の要素が織り込まれているという。

クレズマーといえば、当サイトで紹介している『ドナドナ』もその一つであり、哀愁あふれる物悲しいメロディが特徴的。

日本の歌謡曲もこのクレズマーから影響を受けた楽曲が多く、『ワルツ第2番(セカンド・ワルツ)』と同系統の作品としては、1902年(明治35年)に作曲された『美しき天然』がよく知られている。