スマートグラスとは様々な機能を備えたメガネ型デバイスの総称です。筆者は、この技術こそスマートホンに置き換わる可能性を秘めたものとして、昔からたいへん注目してきました。そしてスマートグラスに関連するいくつかの基本的なアイデア特許を出願させてもらった一人として、最近のこの分野の技術の著しい進歩には感慨深いものがあります。

 

スマートグラスは、現実の空間に映像を重ねて表示する機能を備えたARグラスと区別する見方もありますが、以下においてはARグラスもスマートグラスのひとつとしてはなしを進めます。

 

スマートグラスの歴史は古く、1970年代にアメリカで、ヘッドマウントディスプレイとして軍事用に研究されていたのをはじめとして、日本でもいくつかの企業において研究開発がなされていました。しかし、ほとんどの企業においては、技術が未成熟だったため実用化に至ることなく研究を中止しました。スマートグラスに必要な高度な技術を甘くみていたということもできます。

 

しかし、2000年代になると光学デバイスや電子技術などの進歩により、いくつかのベンチャー企業を中心に開発が再び活発になってきました。スマートグラスに必要な先端技術やその応用技術が進歩してきたからです。そして2013年にGoogleが眼鏡型のARデバイス「Google Glass」を発表して世界の注目を集めました。さらに2016年にはMicrosoftがヘッドマウントディスプレイ方式のARデバイス「Microsoft HoloLens」を発表しました。世界の最先端をリードし、革新的な製品を世に送り出してきたアメリカの世界的な企業が本格的な研究開発を開始したことは、スマートグラスが次の時代をリードする新たな製品になり得る可能性を秘めていることを如実に物語っています。

 

スマートグラスにより、目の前に現れた画面で映像コンテンツを楽しんだり、移動中に音楽を聞いたりできます。動画・写真撮影やスマホと連携してハンズフリー通話ができるモデルも存在します。80型や120型などの大画面で見ているかのように映画やゲームを楽しむこともできます。しかし、これがいまだ一般の認知度が低く普及しないのは、まだ世に出て間もないということもありますが、操作性や性能において改善の余地があり、スマートホンなどの既存製品に対する優位性がそれほど感じられないからだと思います。

 

そのような状況の中、私が最近になって注目しているのがスマートグラスとAIの組み合わせです。高性能な生成AIを備えたスマートグラスは、いわば世界一の知識を備えたと超人のような存在ですから、「自分がいま見聴きしているものについて」口頭で質問すれば、映像や音声により何でも正確に答えてくれるようになるでしょう。同時通訳も可能になるでしょう。スマートグラスは、「いつでもどこでも、われわれの日常生活を補助してくれる便利なツール」として、これまでの生活を一変させるような可能性を秘めています。生成AIはその切り札となるでしょう。

 

おわり