「この世の花」は1955年に発表された島倉千代子のデビュー曲です。1950年代までのラジオといえば、フィラメントがネオンサインのようにオレンジ色にゆらめく真空管を使ったものが主流でした。小生が小学校低学年の頃、この真空管ラジオから流れてくる繊細でやさしい島倉千代子の歌声に聴き入っていたのを覚えています。生意気にもこのころから彼女の大ファンでした。

 

この曲は、北條誠の小説「この世の花」を原作とする映画の主題歌として誕生しました。愛する人の子を宿しながら、偽りの結婚に身を委ねなければならなかった富豪の令嬢・久美子の悲恋物語です。映画のあらすじについては、松竹の作品データベース

https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/02905/

を参照してください。

 

ここでは、さっそく歌詞をみてみましょう。

偽りの結婚に身をゆだねなければならなかった女性の悲哀が、美しい日本語で情緒豊かに表現されています。

作詞:西條八十、作曲:万城目正

1 あかく咲く花 青い花

  この世に咲く花 数々あれど

  涙にぬれて つぼみのままに

  散るは乙女の 初恋の花

2 想う人には 嫁がれず

  想わぬ人の 言うまま気まま

  悲しさこらえ 笑顔を見せて

  散るもいじらし 初恋の花

3 君のみ胸に 黒髪を

  うずめた楽し 想い出月夜

  よろこび去りて 涙は残る

  夢は返らぬ 初恋の花

 

「この世の花」と同じく、偽りの愛で結ばれた女性の悲哀を歌った曲として「La・Novia(ラ・ノビア)」があります。耽美なメロディーとともに流れる哀歌に思わず涙が込みあがってきます。

チリの作曲家ホワキン・プリエート(Joaquin Prieto)が1958年に作り、弟のアントニオ・プリエート(Antonio Prieto)が1961年に歌ってヒッ、ト、同年トニー・ダララ(Tony Dallara)がイタリア語で歌って世界的ヒットとなりました。

 日本では、昭和37年(1962)にペギー葉山がカバーして大ヒットしました。あらかは ひろしの日本語詞は、原詞の内容をほぼそのままなぞっています。

 noviaはスペイン語で花嫁または婚約者(女)の意。花婿または婚約者(男)はnovioとなります。

 

では「ラ・ノビア」の歌詞をみてみましょう。

 

(イタリア語)

作詞:ホアキン・プリエート

 

Bianca e splendente va la Novia

Mentre nascosto tra la folla

Dietro una la crima indecisa

Vedo morir le mie illusioni

白く輝く花嫁は行く

わたしはそっと人混みの中

もどかしい涙のむこう

消えていく 数々の夢

 

La sull'altar lei sta piangendo

Tutti diranno che e di gioia

Mentre il suo cuore sta gridando

Ave Maria

祭壇の上で花嫁は泣いている

誰もがそれを喜びと言うけれど

花嫁は心で叫んでいる

アヴェ・マリア

 

Mentirai per che tu dirai di si

Pregherai per me ma dirai di si

Io so tu non puoi dimenticare

Non soffrir perme, anima mia

あなたは偽って「はい」と言い

私のために祈りながら

あなたは忘れるはずがない

私の魂よ、どうか苦しまないで、私のために

 

La sull'altar lei sta piangendo

Tutti diranno che e di gioia

Mentre il suo cuore sta gridando

Ave Maria

Ave Maria

Ave Maria

Ave Maria

祭壇の上で君は泣いている

誰もがそれを喜びと言うけれど

君は心で叫んでいる

アヴェ・マリア

アヴェ・マリア

アヴェ・マリア

アヴェ・マリア

 

◎日本語詞

作詞:あらかは ひろし

 

白く輝く 花嫁衣裳に

心を隠した 美しいその姿

 

その目に溢れる 一筋の涙を

私は知っている アヴェ・マリア

 

祭壇の前に立ち 偽りの愛を誓い

十字架に口づけして 神の許しを願う

 

その目に溢れる 一筋の涙を

私は知っている 

アヴェ・マリア 

アヴェ・マリア 

アヴェ・マリア 

アヴェ・マリア

 

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趣味のクロマチックハーモニカで「この世の花」と「ラ・ノビア」を演奏してみました。よよかったらどうぞ