日本 - オランダ(0-1)

■予想通り と 予想違い
まず、簡単に大会が始まった時点で3連敗は十分に想定内の結果であった。
これは自他共に認めるべきところだろう。
この点においては「予想通り」と言えるものの、予想外のことも多かった。

まずアメリカは往年の組織力は陰を潜め、キック&ラッシュの拙いサッカーだったこと、ナイジェリアも底力は見せたが守備はかなり雑だったこと、
そしてこの日のオランダも、勝たなければならない試合なのに、あまりにも出来が悪すぎたこと。

個人評価をすれば最低ランクに入るだろうが、本田(圭)が言っていたように、「前から行けば、行ける相手」であることは間違いなかった。

だが、元々そういうサッカーをするメンバーを選んではいない。
中盤を制圧するつもりなら、柏木であったり青山であったり、水野、家長、梅崎、、と選考外になった選手のほうが合っているだろう。
それはつまり「前から来る」はずの「強豪である」はずの3チームを見越しての選考だったわけだが、最強と謳われたオランダでさえこの出来であった。

これなら若手主体で臨むのならもっと自分達から仕掛けるサッカーを見たかった。

この日も1TOP。
さらに香川も外してきての中盤の構成ではカウンターしか手がない。
そのカウンターも、クロス精度だけを求められてたはずの本田のミスキックや、谷口の空回りの飛び出しとで、どうにも歯車は噛み合わない。

完全に指揮官の読みが外れたわけだが、それで負けました・・・というだけではない。
真剣勝負の中で得られる若い世代にとって貴重な「経験」も、たいした経験をすることなく大会を去ってしまうことになった。
このことは敗戦以上に深刻に語られるべきだろう。


■わかりきった課題と光明と
自分たちが支配して攻撃に出たときに攻め手が「偶然」や「個人の閃き」に頼っているのはA代表も同じだが、少なくともオシム時代にはあったはずの中盤の構成力というのも、この日は発揮できなかった。

わかりきった課題はシュート不足とチャンス不足。
決定力不足と言うことで隠してしまうこれらの問題は深刻である。
とにかく「決定的チャンス」が少ない。
チャンスを潰すことはいつものことだから、もう騒ぐな、と言いたい。
真の強豪になるには、1試合1つか2つのチャンスを決めるべき、という意見もあるだろうが、日本はそんなレベルの話しではないし、そういうサッカーを目指すべきでもない、と思う。

そんな集中力や、決定力を求めるやり方は日本サッカーには合わないだろう。
だからこそ、全員が連動してチャンスに飛び込み、チャンスの数と質を上げていくやり方を追求してたのではないか?
もちろんシュートが下手なのは、何年も掛けて治してほしい課題ではあるが。


新たに見えた課題としては中盤の技術や構成力だけなら、日本はそこそこやれると思っていたが、こんな出来のオランダ相手にもかなりの確率でミスからボールを渡していた。
中盤のパス回しも日本は「巧くなった」と勘違いしていた。

何が違うかというと、攻撃のための中盤の繋ぎではなく、単にとられないように必死に繋ぐだけ、目先で交わすだけ、が巧くなっただけだと感じた。
何年も掛けて中盤と技術を高めてきたはずのユース世代の指導者は考え直したほうがいい。

パスは何のためにするのか?

この日は攻めてでる!という意思が見えたため、安全指向ばかりではなかったが、意図が見えない横パスの繋ぎが多いのも相変わらずだった。
日本はFWが一人でキープして上がりを待つ(いわゆるポストプレー)が出来るような身体能力をもったFWは居ない。
だからこそ中盤で繋ぎながら全体が押し上げる「時間」を作るのが目的のはずだ。

だが、全体を押し上げるのは、最終的には攻めて攻撃するため、、、のはずが、どうも 時間ばかりかかって いつ攻撃するのかさっぱり見えない。

どんな戦術だって穴はある。
指揮官の目論見が外れることだってある。
イタリアが2点以上取られることだってある。

だが、世界の強豪が強いのは「同じ意思」のもと、自分たちはこうするんだ!という強い共通意識を持っているからこそ強いのだ。
その結果として、その戦術、考え方、戦い方が良かったのか、間違っていたのかが見えてくる。
日本はまだ、どうやって戦う、、という共通意思さえ見えなかったのは残念でならない。

もちろん、「相手に合わせる」という戦い方もあるだろうが・・・
日本人はそんなに器用ではないと思う。
それよりも、「これをすればいい」と決めたことを やり続ける忍耐力や、従う力は非常に秀でてると思う。


最後に見えた光明だが、前2試合ではSBの内田、安田が非常に良い出来であり、クロスにも工夫が見られた。
そしてこの日は長友が、出来の悪いオランダ相手なら身体の競り合いでも負けないことを示して見せた。

今後も4バック、もしくは5バックで行くなら将来が楽しみな選手達である。
攻撃では豊田が比較的中盤との連携やシュートの意識が見られたのは良かった。

即A代表というわけにはいかないだろうが、FWの得点力を求めないサッカーを目指すなら、楽しみな選手である。


■上手い選手ほど言い訳をする・・・良い選手ほど言い訳をしない
下手な選手、劣等感を持ち続け這い上がってきた選手は、「あいつは上手いから・・」と常に思ってきた。
試合の判定や、状態や、審判に言い訳はしない。
自分が下手なのがわかっているから、自分にもっと努力の余地があると思っているから。
だが、中途半端に上手い選手は 常に周りのせいにする・・・

本田が「審判に邪魔された」といい、梶山が「チームの差はなかった」と虚勢を張る。そして日本の中で上手いといっても世界から見れば下手なのに勘違いしてるように思える。
こんな発言は超一流の選手が、ホントに紙一重で負けたときにしか言えないはずだ。
まぁ、超一流の選手であれば、そんな言い訳はせず、自分たちの精進すべき点を考えるだろうが。

柔道でかつて誤審で敗れたのにもかかわらず、「負けたのは自分が弱いから」と名言を吐いた男がいた。
上手い選手ほど、そういう気持ちをもつべきだ。

そしてそういう気持ちをもった選手だけが「良い選手」になれる。
良い選手も、上手い選手もプロになれるのだろう。
だが、代表は、「上手くて良い選手」の集団になれば・・・と願う。

今回のU-23はどうも、上手い選手、良い選手(がんばれる選手)の2極化を感じた。日本サッカーの流れかもしれない(才能ある選手は「俺の良いタイミングでボールをよこせよ!」といった横着な態度が通ってしまう高校サッカーのような)

そんな選手を「日本代表」として応援する気には、、、なれないだろう。


■選手批評(3試合通して)
GK
西川 5.5 及第点。が、1本くらいはファインセーブを見たかった。
山本 - 出場なし

DF
吉田 5.0 オランダ相手に能力は見せた。
水本 5.0 主将ながら不調時に盛り上げるだけの気迫は見せれず。
長友 5.5 身体の強さは見せた。攻撃時のアクセントは物足りず。
森重 6.0 攻守にマルチな才能を発揮。ユーティリティ。
内田 6.0 サイドを制する。このレベルなら守備の破綻もなく十分な出来。
安田 5.5 攻撃に持ち味を発揮。守備の不安は若干残るが。

MF
細貝 5.5 中盤の守備を引き締めた。不可欠な働き。
本田圭2.0 攻守に不満。持ち味も出せず運動量も乏しく。
梶山 1.0 10番の面影はなし。戦う意思も、パスの意図も見えない。
谷口 4.5 動きは良かったが流石に外しすぎた・・1本でも決めていれば・・・
香川 4.0 奮闘したが噛み合わず。無理な仕掛けもあり、若さを露呈。
本田拓4.5 守備で奮闘。もう少しビルドアップに絡めれば

FW
豊田 5.5 唯一の得点者。可能性を感じさせたが技術に限界も。
岡崎 5.0 運動量は流石。技術不足も、走る量でカバー。
森本 2.0 まったく周囲と噛み合わず。ポストプレーも不調で残念。
李  4.5 気迫は見せたが空回り気味。

監督
反町 0  
メンバー選考から疑問に思っていたが、この結果で「満足」はない。
だが、この監督がこうなのは前からわかっていたことで、ここで首を切って終わりとする日本サッカー協会のほうが重罪だろう。

采配で言えば、常に後手にまわり、3試合通して最初から自分たちの形で挑むこともなく、積極的な交代も見えず最後には練習さえしてないパワープレーを要請するなど、選手を振り回し続けた印象。

サイド突破に光が見えたのは選手の能力に依存するもので、それがわかっても、大会途中から最大限に活用するように変更するでもなく、最後まで「相手の出方を伺った」ままのサッカーに終始。

伺った結果先制され、後から交代するシーンは見飽きた。
OA枠を使わなかったことから、若手育成に切り替えたかと思えば、そうでもなく、中途半端な現実路線の戦い方で何も得られず敗退したことは非常に由々しき問題である。

こんなことは最初からわかっていたことだが、国際大会の経験が不足している彼に任せたこと自体 間違っていたといわざるを得ない。