タンスの奥から母の黒留袖が出てきた

黒留袖は
着物の中でも最も格式の高い正礼装どっしり重く
丸に鷹の羽の五つ紋
何度も 出番があったのだろう
白い羽二重の裾は汗ジミで黄ばんでいる
比翼の二枚重ねを取り除くと
上品な模様が現れてくる
漆黒の黒地 渋い朱色 
シンプルな羊歯の葉っぱ🌿の文様
 
羊歯の葉には
金粉が散りばめられ
すっきりと落ち着いて地味だけれど
華やぎもあり品もいい
私の結婚式の日
この黒留袖をきて 
忙しそうに来客に挨拶にまわっていた母の姿が浮かぶ
 
実家の松川屋の玄関前に
丸に鷹の羽の紫の垂れ幕を掲げて
古い着物は 
亡き人を偲ばせてくれる