『ティファニーで朝食を』の映画の中で
長いシッポをゆらし、しなやかに歩いていた トラ猫チャン![]()
トルーマン・カポーティの小説では どのように描かれているのだろう・・・?
気になって
本で、
探してみた。
「 陽のよく照る日には髪の毛を洗い、赤毛のトラ猫と一緒に
非常階段の上にすわり、毛をかわかしながらギターを爪弾きしていた。」(p.25)
と、映画でホリーが「ムーン・リバー」を歌う名場面に、
語り手の回想で登場し
「大皿の台からとびおりたり」(p.46)
「まるで狂想曲を指揮するタクトのように尻尾を振り動かし」たり(p.136)
やはり あちこちで活躍する。
その様子は:
「小鳥のように
そこに(ホリーの肩)チョコンととまって、
体の中心をとっていたが、
その前足は糸でもあむように
彼女の髪の毛をもみくちゃにしていた。
だがしかし、このように愛嬌たっぷりの道化芝居をやりながらも、
それは凶暴な海賊みたいな顔をした、
すごみのある猫で、
一方の眼は
ねちねちして盲目状態だし、
もう一方は
凶悪行為のためぎらぎら光っていた。」(pp.47-46)
こわ~~い猫ちゃんとして、描かれている。
ラスト・シーンは圧巻だ:
ブラジルへ移住しようとするホリーは、
途中で トラ猫が邪魔になる。
罵倒して、捨てようとするホリー
じっと見上げて、すり寄る猫ちゃん・・・
猫が消えてしまうと、声をつまらせ
「わたしたちは離れられない間柄だったのよ・・」
ホリーは、後悔し
「わたしの身はどうなるの?」
猫が、自分自身の片割れだったことに やっと気づき
不安をつのらせながら、去る![]()
あとに残った語り手の作家は
その後
温かそうな部屋の窓辺で
うずくまっているトラ猫を見つけ
彼女の不在を想う
で終わる。
ほんと、映画のラスト・シーンとは、全く異なり
作者カポーティは、試写会で、ラストを観て
椅子から転げ落ちたそうだ・・・
参考文献: 『ティファニーで朝食を』 カポーティ、龍口直太郎訳、新潮文庫