当時、下北沢に住んでいて、小田急線に乗っていたら、旧友の松尾くんと
ばったり会った。
彼は開口一番こんなことを言った。
「俺の家の近くのビデオレンタル屋に、すっごいビデオがあるぜ!」
僕はなんのことやら分からないが、興味津々で彼のあとをついて行った。
そこで、とんでもないものを発見した!!

松尾くんに案内されたのは、AVコーナー!
そこで目にしたのは、ほんの数か月前まで付き合っていた女性が、表紙になっている
Hビデオ。
「うわ~!なんだこりゃ」と、絶叫する僕。
松尾くんは、クスクス笑っていた。
とにもかくにも、レンタルして、松尾くんが住む代々木上原のアパートでビデオ観賞会を
行った。
彼女(M美)が出演しているビデオは、まぎれもないAVだった!
あえて詳細は書かないが、かなりハードな作品に仕上がっていた。
見ていると、現実とバーチャルの境目が分からなくなっていった。
まるでその当時公開されたばかりの「トータルリコール」の様だった。
実は彼女は、当時の僕の元彼。
僕とは3ヵ月間ほど付き合ったのだが、別れ際、こんなことを言われてしまった。
「あなたじゃ満足できない。わたしはもっと上に行きたい」
彼女は、女優を目指していた。
それを聞いて、僕はかなりショックを受けた。
「俺って、魅力ないのかなぁ~」なんて、悩んだこともあった。
そんなことを言った彼女が、安っぽいミニスカートをはいて、AVに出演している姿を見て、
少し滑稽に思えてきた。
彼女も彼女なりに、女優という仕事に少しでも繋がればという思いからだっただろうけど、
”女優とAV女優”じゃ、まったく意味合いが違う。
当時、上映されていた井筒監督の「犬死にせしもの」という映画には、いまでは大女優になった
今井美樹が全裸で、浜辺を走るシーンが出てくる。
まだほとんど無名のときである。
彼女も宮崎から上京してきて、東京でチャンスをつかみたいと思っていた時期である。
ややもすれば、女優魂ということでは、今井美樹もM美ちゃんも同じかもしれない。
しかし、今井は大女優となり、M美ちゃんは、女優の道をあきらめたらしい。
「M美ちゃんが、脱いだ!」
「AVらしいぜ!」なんて、噂話は仲間内で一瞬に広まった。
それから、僕らの間では、月に一度発売される彼女のAVを借りてきては、ビデオ鑑賞会を行う
のが定例となった。
世はバブルの真っただ中、第1次AVブームの到来を迎え、様々なAV女優が輩出されていく。
ちょっとHな気分と、複雑な思いが入り混じった貴重な体験である。
彼女がAV女優になった真意は、僕でもわからない。
こんな経験って、一生に一度あるかないかだね!