先日亡くなった俳優・原田芳雄。
この人が出演するだけで、映画やドラマのクオリティーがグッとあがる。
そんな役者が、日本にどれだけいるだろうか?
とにかく、原田芳雄の死は、大変ショックである。
20歳で上京した僕が、初めて名画座で見たのが、ATG特集だった。
主に、‘70年代から‘80年代前半につくられた映画で、「ジャパン ニューシネマ」の
ようなもの。
ATG特集の中で上映されたのが、「祭りの準備」と「竜馬暗殺」である。
「祭りの準備」は、脚本家・中島丈博の田舎から上京するまでを描いた最高作品。
主役は、江藤潤なのだが、毎回ふらりと現れ、江藤潤に絡むのが原田芳雄である。
田舎でくすぶっているチンピラみたいな役で、最高に良い味を出していた。
「竜馬暗殺」は、原田芳雄が龍馬を演じた作品である。
竜馬の役は、数々の役者が挑戦したが、原田芳雄ほどのハマリ役はないだろう。
TBSドラマ「仁」の竜馬役を演じた内野聖陽は、「竜馬暗殺」の龍馬を参考にしたのでは
ないだろうか?
役作りがまったく同じである。
「竜馬暗殺」には、デビューしたばかりの松田優作も出演している。
優作は、デビュー前から、原田に憧れ、その一挙手一投足を模倣したと言われる。
原田芳雄と松田優作
優作は、原田のことを「兄貴!」と呼んでいた。
優作が慕い、俳優としての悩みや抱負を打ち明けられていた原田芳雄。
「ブラックレイン」が上映され、その直後急逝した松田優作。
葬儀のとき、弔辞を読み上げたのが原田で、とても印象的だった。
涙声で原田は、搾り出すように言う。
「お前も役者なら、生き返って戻って来い」
弟のような存在の優作の死は、原田にとっても大変心痛なことだっただろう。
先日原田が亡くなり、弔辞を石橋蓮司が読み上げた。
「芳雄、お前の存在を、日本の映画界は、まだ求めているんだ。ここに戻って来い」
と、石橋は言っていた。
その言葉は、原田が優作に言った弔辞と同じだった。
上記の「竜馬暗殺」の写真には、奇しくも原田芳雄、松田優作、石橋蓮司の三人が
写っている。
原田もまた優作と同じように、新作映画「大鹿村騒動記」を撮り終えたばかりだった。
優作は膀胱がん、原田は大腸がん。
二人は、最後の最後まで映画人だった。
映画という魔物にとりつかれ、心血を注いだ二匹の「龍と虎」
もし天国というものがあり、原田と優作が再会したら、どんな会話をするのだろうか?
許されるのであれば、その会話を聞いてみたい。
優作は亡くなる前に、原田に「また共演したい」と言っていた。
その夢が、叶えられていることを願いたい。
この二人の訃報は、これから日本映画をどこに導くだろうか?



