秋もいくぶん深まり、冬の足音がきこえはじめる11月22日。どうしても出席せざるを得ない会議がようやく終わり、大急ぎで都内の病院へ向かう道中、第一子誕生の知らせが五条の携帯に入った。
しばらくして病院に到着し、入院する病室へ伏黒に頼まれた荷物とともにまっすぐ足を進める。ドアをノックすると、どうぞ。と声がする。
「めぐ、頑張ったね。お疲れ様。」
「この子悟さんそっくりですよ」
伏黒はベッドから上半身だけ起き上がり、読書中だったようでぱたんと本を閉じ、横に置かれた透明なケースの中で眠る生まれたてホヤホヤの我が子を見る。
「名前だけど、もうちょい待ってて。今めっちゃ悩んでんの」
「はぁ。では素敵な名前よろしくお願いしますね」
「スグ考えるから!決まったら即来るね!」
この後任務の打ち合わせが入っているため、面会を手短めに済ませ病院の立体パーキング内で待機していた伊地知の車に乗り込み、一路高専へと戻る。
待機中に時短で帰ることができるルートをナビで選択していたようで、首都高経由で戻るも途中数キロの自然渋滞があったが時間どおりに到着した。
校内を歩いていると同級生でありながら自分と同じく教師をしている夏油を見つけた。
「傑お疲れサマンサー。これ、コーヒー僕のおごり。それとさ一つ聞いていいかな」
「ありがとう。で、用件は何だい?」
「子供の名前になー。親の字つけるってどう思うよ」
「うーん。人によるんじゃないかな」
あれ。スルーっていうよりはぐらかされた?よし、もういっちょ重ねてみるか。とさらに質問を投げかける。
「部首を同じにするとか…」
「それも人によるんじゃないかな」
「…オマエに聞くんじゃなかったわー。」
「で、君の子供はどっちに似てたんだい?」
「僕かな。髪の毛とか超クリソツだったぞ。あぁー六眼持ちかなぁ!そうだといいなぁ!」
「おめでとう悟。お祝いは後日渡すよ。何せ急だったしね。さて、私は任務の時間だからこれで失礼するよ」
「ん、行ってらー。」
夏油を見送ると、飲みかけのカフェラテを飲み干しまたどこかへプラプラと歩き出す。歩き出した所で教室が目に入り、誰かいるかなと覗いてみると虎杖・釘崎・藤村の3人がノートやルーズリーフ、本を広げ勉強会を開催していた。
「おはやっぷー。邪魔しちゃって悪いけど、みんなに聞きたいことあるんだ。いいかな」
「いいっすよ。ちょうど休憩しようとしてたとこだし」
「あのさ、子供の名前に親の字1字つけるってどうよ」
「そっちかー」
「うっわぁ…すっごい微妙…」
「戦国時代の大名とか室町の足利氏に江戸の徳川家も字使ってたし、いいとは思うけど現代だと…ねぇ。どうだろう…」
3人ともイマイチなリアクションをとった。この時代に親の字を1字つける…あまりなじみがないうえに、むしろ自分の祖父母世代ならまだ分かる。
「今ね、この字とこの字で激迷ってるのね。()は読み方だよ」
くるっと黒板の方へ体を向けると、チョークで『悠(はるか)』,『惟(ゆい)』という2文字を書いた。
「「「ほぉー」」」
「いいっしょ?んで、悠は恵の字の部首入れてて。惟は僕の字の部首」
そう言いながら、五条は白チョークを置き黄色のチョークを手に取ると2文字の部首の部分をぐるりと囲った。
「"はるか"と"ゆい"か…」
「どーちーらーにーしようかなーで決めたらいいんじゃないかしら」
「あ。ダーツの旅っぽく、ダーツ投げるってのは?」
「それって矢が刺さった所に決定。行きますよ。ってやつ?」
「やつ。」
「それか円形にして、ぐるぐるっと回転させても面白いんじゃない?別番組で似たようなの見た」
「はっ!ボードだけ作って、野薔薇に釘打ち込んでもらうってものいいね!話聴いてて思った」
「それいいじゃん先生!」
「私のプレッシャー考えろバカああああ!!」
「野薔薇の腕前に全てかかる子供の名前…責任感やばっ」
なんやかんやで某フレンドパークのような、どこかで見たことがある円形のボードを作り、釘崎が共鳴りを打ち込むことになった。
釘崎回すぞーと虎杖が回転させる。
「「「パー○ェロ!パージ○ロ!」」」
「行くわよ…共鳴り!!」
「「「おおっ!!?」」」
渾身の共鳴りで釘を打ち込む。カンッともキンッともとれる音をたてそれがボードに刺さる。
果たしてどんな名前になったのか。
任務の打ち合わせが終わり、再び五条は病院へと向かった。
手に子供の服や伏黒の着替えに暇つぶしで読む本を持ち病室へ入る。
「名前を今しがた決めてきました恵さん」
「何でそんなに腰低いんですか」
「傑と悠仁に野薔薇と蓮にも相談して、結果こうなったよ」
携帯で撮った写真を伏黒に見せると、「悠」のスペースに釘が刺さっている。
「(釘崎の…だよな?)ゆう…ですか。読み方」
「違うよ。"はるか"だよ。その子の名前は悠ではるか」
「いい名前ですね。はるか」
「どこまでも、長く…長ながと両親の思いが続くように。って。だから、君は悠(はるか)だよ」
そう言うと、五条は悠の頭をそっと撫でた。
「何で釘崎の釘が刺さってるんですか?」
「僕が迷いに迷った結果がそれよ。某フレンドパークの、パー○ェーロ!パージェー○!のやつ。分かるかな?」
「あぁ…」
*あとがき*
悠の名付けエピソード。悩みに悩んでそうだなぁと。惟は数年後誕生する弟に。
私も刀剣の引き換えシールで岩融と大包平でバカみたいにクソ迷って、花丸アニメ2期までに出た刀剣にしよう!と決めたものの、その2振りが残って。えんぴつ占いみたいにリップ転がしたりと散々迷った結果大包平にした思い出。
フレンドパークと車の名前・ダーツのくだりは流石に年がバレる(笑)五はリアル年齢で分かると思う。
そしてそして、五「おはやっぷー」は中の人ネタ。どうしても言わせてみたかった。反省はしている。
『おはやっぷー』と『覚悟はいいか、俺はできてる』もいつか五に言わせてみたい!と思ってて、先におはやっぷー言わせられた!(笑)
伏は公式で実話系の本を読む事が多い。ってあるけど、推理ミステリーとか東野氏・湊さん他有名な推理系ミステリー系作家さんの本も読みそう。少々重たいけどハードカバーの本とか。
五が暇つぶしに持ってきた本はそれらをイメージで書いてみました。
悠と惟の誕生日は後日加筆修正。ノープランで何も決めておらんくて。まぁ両親の誕生日から1か月引いただけなんですけどね!(笑)