(ヴェルディの松本戦の夜、俺が思ったことを架空のサポーターカップルに代弁してもらいました。

妄想や創作などが苦手な方はご注意ください)


松本駅舎の蕎麦屋。


カップルだろうか、二人組の男女のサポーターが入ってくる。


「何名様ですか?」


「2名です。空いてますか?」


「空いてますよ。どうぞこちらへ」


「どうも」


女性は口を開かず、うつむいたままだ。


「何にする?」


「・・・。」


「一緒でいい?」


女性が頷く。


「すみません、海老天蕎麦2人前、冷たい方で」


「畏まりました」



「お待たせしました、海老天蕎麦です」


「ほら、来たよ」


「・・・。」


「食べないの?」


「いらない。食欲ない」


「体調悪いの?」


「違う。あんな負け方したから」


「それは分かるけどさ。アウェイの遠征って、こういう結果になることも想定して来てるわけだろ?映画や舞台みたいに、筋書きがあるわけじゃないんだし」


「それはそうだけどさあ・・・」


「わかってるんなら、少しでもこっちに来て良かったと思いたいだろ?

 だったら、食べたほうがいいぞ。ここでしか食えないんだからさ」


「わかった」


女性が蕎麦を食べ始めた。


「あっちはいいよねえ。あんなにたくさんのサポーターが毎回来てくれて、それに強くてさあ」


「今度は相手チームに嫉妬かよ。まあ、分かるけどさ」


「それに比べこっちはさあ、辛い事ばっかりで・・・」


「本当にそうなのかな」


「えっ?」


「向こうも向こうでつらいと思うぞ。初めてのJ1でメッタメタにされて、1年で追い返されて。次の年、1年で戻れるかと思ったら最後の最後でひっくり返されて。プレーオフでは初戦で負けるし、去年とかプレーオフにすら出れなかったわけじゃん、絶対有利だったのに」


「そうか・・・」


「逆にそういう悔しい思いをしてきたから、今があるんじゃないのかな。俺たちがサポーターなってからは確かに辛い事多かったけど、それまでってたくさんいい思いもしてきたわけじゃん」


「うん・・・」


「今日は確かにきつい負け方だったけどさ、まだ可能性もあるし、それにチームはこれからもあって応援できるわけじゃん。そう思ったら、俺たちは恵まれてると思うよ。J2に苦労して上がったのに一度も上位争いできず降格したクラブだってたくさんいるんだし」


「そうだね・・・」


「だから、がんばろうよ。このクラブを応援するって決めたんだから」


二人は手を繋ぎ、誓い合っていた。


戦いは、まだまだ終わらないー