さて、かくしてJリーグ初のホームタウンの移転を行ったヴェルディですが、今回の代々木の新スタジアム構想が発表される際に、一部のサポーターやファンの方から挙がっていたのが、「一緒にホームタウンも移すのではないか」という危惧です。


 私が考えるにこれは「ノー」だと思います。理由としては、ホームタウンが置かれている地域(稲城市、八王子市、練馬区、新宿区etc・・・)とホームスタジアムがある地域(神奈川県川崎市→東京都調布市)がリンクしていないため、本拠地を移転したとしてもホームタウン活動には影響しないと考えるためです。


 ヴェルディは読売新聞、及びその後の日本テレビという大きな親会社が去った後は市民クラブとして、ホームタウンの地に足を付けた活動をしてきました。しかしながら、肝心のスタジアムがある調布市はFC東京のホームタウンとして、さらにはFC東京とパートナー契約を結んでいるため、肝心の調布市、およびその周辺の地域ではホームタウン活動が出来ない状況で、駅やスタジアムの周辺のお店にポスターを貼るのが精一杯となっています。いわば本拠地をせっかく移転したのに、スタジアムでの周囲での活動が出来ないいわば「ねじれ状態」にあるわけです。


 このような「ねじれ状態」を解消する一番ベストな方法は、ホームタウンのエリア内にホームスタジアムを建設することであり、練馬や多摩といった地域にスタジアム構想が幾度も上がりましたが、いずれも立地の問題や近隣住民の反対などで実現していませんでした。


 おそらく代々木の新スタジアム構想は、こうした「ねじれ状態」を解消するためのもので「ホームタウンの移転」ではなく「ホームスタジアムのみの移転」であると考えます。


 「ホームタウンの移転」については私は愚行だと思いますが、「ホームスタジアムのみの移転」であれば私は大賛成です。なぜなら、成功事例が山ほどあるからです。


 参考までに、ホームスタジアムを移転したチームの主な例を挙げます。


浦和レッズ 駒場スタジアム→埼玉スタジアム2002

横浜Fマリノス 横浜三ッ沢球技場→日産スタジアム ※ただし一部試合では三ッ沢を利用

ガンバ大阪 万博記念競技場→吹田スタジアム

ジェフ千葉 市原臨海競技場→フクダ電子アリーナ

ギラヴァンツ北九州 北九州市立本城陸上競技場→ミクニワールドスタジアム北九州

   

 特に浦和、G大阪などは今の赤や青のユニフォームに埋め尽くされる光景を見慣れているので、以前のスタジアムの光景を見るとそのギャップに愕然とすると思います。

 スタジアムの移転の理由としては、スタジアムのアクセスの問題、収容人数の問題など様々な理由がありますが、基本的にはネガティブなことではなく、クラブのさらなる発展を目的としたものです。


 何よりも、スタジアム移転は大半が成功しています。浦和、マリノス、ガンバは新しい本拠地に移ったことでさらなる観客動員の増加に成功し、J1の臨海時代はスタジアムのアクセスなどの問題からJ1の観客の動員数でも下位に低迷していたジェフも、今やJ2ではトップクラスの観客動員数を誇っています。

 唯一の失敗例となっているのが新スタジアム完成のシーズンをJ3で迎えることになってしまったギラヴァンツ北九州ですが、これについてはクラブの努力に成績が追いつかなかった結果ですので、もしライセンスがない年にプレーオフ争いをしていた勢いを維持し、J1に上がることが出来ていれば鳥栖や長崎と肩を並べるJ1の人気クラブになっていた可能性も十分にあります。


 この事例で、ホームタウンの移転とホームスタジアムの移転は全く別物であるということ、ホームタウンの移転に比べホームスタジアムの移転はメリットの方が圧倒的に多いことをご理解いただけたかと思います。


 次回の記事では、ヴェルディにとって新しいスタジアムに移転するメリットについてお伝えし、このコラムを締めくくりたいと思います。