前半が終わり、他会場では山雅は依然としてリードを許していたが、ジェフは1-1の同点に追いついていた。

 

 やはり他会場の結果に頼ってはダメだ、自分たちが勝たなくてはいけない。改めて気を引き締めた。

 しかし、後半が始まって10分もたたないうちに、徳島のエース渡大生に豪快な同点ゴールを叩き込まれ、試合を振り出しに戻されてしまう。

 またこの日のヴェルディはほぼベストメンバーの徳島に対し、ヴェルディは主将で守備の要の井林を出場停止で欠いており、それに加えて攻撃の軸であったMF渡辺皓太が体調不良で急遽欠場する満身創痍の状況だった。

 この日も徳島の分厚い攻撃に手を焼き、同点に追いつかれた後にもエース渡やサイドアタッカーの馬渡和彰の突破に何度も危ないシーンを作られた。

 しかし、ヴェルディには2017年のシーズン、大きく成長した生え抜きのドリブルキング、安西幸輝がいた。

 安西は何度もサイドをかける馬渡からボールを奪い、徳島ゴールへ迫った。彼が突破するたび、「行けーーー!!!コウキーーー!!!」と大人げもなく絶叫してしまった。しかし、前線にいたアランとドゥグラスが完全にマークされ、ことごとく跳ね返され決定的なチャンスを作れなかった。

 さらに皓太に変わって入った井上潮音が接触プレーで負傷交代。すぐさま大ベテラン、橋本英郎が投入された。

不利になりがちだったゲームだったが、ベテランならではの冷静なプレーで橋本が締め、時間は次第に過ぎ、試合は80分を超え終盤に差し掛かりつつあった。

 アランに代わって投入されたカルロスがDFに囲まれてシュートを打てず、安在和樹にボールを戻す。

そのパスを受けた安在和樹の遠距離から放たれたシュートは徳島GK長谷川の一瞬の気の緩みを見逃さず、枠を捉えるが、間一髪で戻っていた徳島のDFによってクリアされ、CKに変わる。

 再度仕切りなおしのCK。キッカーは梶川。ゴール前に精度の高いボールが送られる。両チームの選手が混戦になる。その時だった。

 

 畠中シュート!!!ああっポストだー!!!

しかし内田が拾う!!!押し込めるか!?押し込めるか!?

押し込んだああああーー!!!!!!

 

大きな得点!!!最後に決めたのは

内田達也!!!

 先制するも1度は追いつかれ、土壇場で勝ち越すのは自分の中でサッカーの「王道展開」だと思っている。

 このどちらに転んでもおかしくない試合展開の中で、東京ヴェルディはこの瞬間、最後の最後で「主役」になったのだ。

 目の前にあるのは、筋書きがあるドラマや演劇ではなく、自分たちで勝ち取った「真実のドラマ」なのだ。

 そして少しずつ、残りの時間が過ぎ、ATもあとわずかになった。今期最多の人数を集めたゴール裏から、多くの人が立ちあがり、緑のタオルマフラーを掲げる。

俺のヴェルディ オーオー

俺のヴェルディ オーオー

俺のヴェルディ オーオー

オー ヴェルディ 愛してる

ゆっくりと、ゆっくりと時が刻まれる。

交代で入った高木大輔がゆっくりと相手のコーナーポストにボールを運ぶ。

そして主審のホイッスルが鳴った。

この瞬間、東京ヴェルディのプレーオフ進出が決定した。


 

俺のヴェルディ オーオー!

俺のヴェルディ オーオー!

俺のヴェルディ オーオー!

オー ヴェルディ 愛してる!!!

歓喜に沸くヴェルディゴール裏。

検討をたたえ合う選手たち。

そしてPO進出を逃し、うなだれる渡、馬渡、ロドリゲス監督、徳島のサポーター・・・

何もかもが劇的で、歓喜と悲哀がはっきりと分かれていた。

その中でヴェルディの勝利のラインダンスが、東京の夜空にこだました。

 その翌週、熊本の地で行われた昇格プレーオフにおいて、アビスパ福岡と対戦したヴェルディは山瀬功治のミドルに沈み、完全にJ1復帰への道は閉ざされた。

 あれから月日は流れ、ヴェルディはメンバーも立ち位置も大きく変わっているが、再びJ1昇格へ正念場を迎えている。

 あの日激闘を繰り広げたWアンザイ、徳島の渡、馬渡は一足早く、J1の舞台に戦いの場を移した。

 だが、あの日目に焼きついたあの光景、あの歓喜の瞬間はヴェルディのサポーターに忘れることの出来ない景色となった。

 あの光景を再び、いやそれより先のJ1昇格、そこからもう一度、Jリーグを引っ張るウイニングチームへ。

 信じる限り、夢が終わることはない。

 物語は、未来へ続くー。