あの日、飛田給駅に着くやいなや、私は一刻も早くスタジアムに行かねばと、スタジアムに向かういつもの道を走り出した。
どうしても外せない用事があって無念ながら途中からの参戦となったあの日。試合は前半30分を既に回っていた。この味の素スタジアムへ向かう道は当然、自分にとっては見知った道だ。
だが、心臓の動悸が止まらなかった。何かがかかった試合というのはこんなにも興奮し、動揺するものなのか。自分にとってはTVなどですら長らく味わっていない、ましてや現地で観戦するものとしては本当に久しぶり、いや初めて味わう感覚であった。
2017年のシーズンも、残すは1試合を残すのみとなっていた。既に湘南ベルマーレとVファーレン長崎の自動昇格が決定し、2017年のJ2は残るはJ1昇格プレーオフの出場権争いに絞られていた。
既にプレーオフ進出を決めているのは、最後まで自動昇格を争っていたアビスパ福岡(3位)、名古屋グランパス(4位)の2チーム。残る5位、6位の枠を4チームで争っていた。松本山雅FC、徳島ヴォルティス、ジェフユナイテッド千葉、そして東京ヴェルディ。
松本、徳島は引き分け以上でPO進出が決まる有利な条件で、ヴェルディは勝利すれば無条件、引き分けの場合は他チームの結果次第だった。
電車での移動中、他チームの試合速報を追っていた(なお、スタジアムでは他チームの結果は気にするなという指示が出ていたようだが、私は知らなかった。)
すると、流れはヴェルディに傾く。開始1分、フクアリで横浜FCと対戦していたジェフ千葉がいきなりオウンゴールを犯し1点のビハインドを背負ってしまう。
そして、前半半ば、今度はアルウィンで京都サンガと戦っていた松本山雅が京都に先制ゴールを許し、ビハインドを背負う。
間違いなく、風はヴェルディに吹いている。期待に胸を膨らませ、ようやく遅れて味スタに入った。
そして、その数分後だった。セットプレーからDF平がヘディングで押し込み、ヴェルディが先制点を奪う。スタジアムは興奮のるつぼと化した。
そして、自分の目の前には驚くべき光景が広がっていた。ゴール裏はぎっしりと人が詰まり、空席を探すことすらも困難だったのだ。
おそらく、昇格POがかかった大一番だけは見ようと、長らく生観戦から遠ざかっていた古参サポや、昇格POがかかったこのビッグマッチを見届けようと第三者の野次馬やライトサポがおしかけたのだろう。
「ヴェルディサポって、こんなにいたんだ・・・」
いつも残念ながら空席ばかりのゴール裏を見ていた自分にとって、涙がでる光景だった。
かつてJ1にいたころのヴェルディの試合は数試合しか行っていないので、よく覚えていないけれどかつてはこれだけのお客様が毎試合、ヴェルディの試合を見るためにかけつけてくれていたんだろう。それが浦和レッズ、鹿島アントラーズ、横浜Fマリノスらとのビッグマッチともなれば、1万どころか2万人、3万人ものお客さんが駆けつけていた。それは今となっては遥か昔のことのように思えるけど、ようやく少しその姿に近付けた気がした。
決してこれは偶然から生まれたものではなく、サポーター、選手、スタッフ。ヴェルディにかかわる全ての人の努力によってもたらされたものだ。
そんな事を思っているうちにいつの間にか前半は終わり、1-0とリードで折り返した。間違いなく、ヴェルディにとっては理想的な展開であった。
しかし、迎える後半にはヴェルディにとって大きなピンチと、さらなるドラマが待ち受けていた。