前半8分、渡辺が果敢なボール奪取から攻め上がり、相手DFに危険なスライディングを受けるもかわし、キーパーとの1対1を制しゴールに流し込んだ。
しかし、スライディングを受けた時点でファウルがあったとの判定でFKからのやり直しになり、得点は認められなかった。
しかし、そのプレーで熊本の相手DFが退場処分となり、早い時間帯から数的不利に陥った熊本は自陣に押し戻され、カウンターを狙うだけのヴェルディのワンサイドゲームになった。
だが、熊本の守備は必死だった。
ヴェルディのシュートをことごとく跳ね返し、何度か訪れた決定的なシュートもGKの好セーブに阻まれた。
これだけの条件で勝てないのか。
1点取れば勝てるという期待よりも不安に心は支配されていた。
だが、選手たちが必死に戦っていることは伝わってきた。
私の脳裏に浮かんだ言葉。
「サポーターが折れたら、選手がかわいそうだよ」
何度か出ているサポルト!に書かれていた言葉だ。
そうだ、後押ししなきゃ。
まだ時間は残ってる。勝つぞ!
時計の針が45分に差し掛かろうとしていた。
ゴール前に上がったボールが、熊本DFの手に当たる。
しかし笛はならない。
ハンドだろ!サポーターが憤る。
しかしこのプレイで熊本の選手のプレイに一瞬の焦りが生まれた。
田村がボールを拾い、ゴール前にクロス。
ドウグラスの打点の高いヘディングが熊本GKの逆をつき、ボールは今度こそゴールネットに突き刺さる!
ようやくこじ開けたあー!!!
(dazn実況)
代表戦などでしか知らなかった瞬間が目の前にある。
その瞬間、サポーターが多数、ゴール前近くに移動した。
「アレ アレ アレ ヴェルディ アレ
俺たちは 勝利のため この歌を歌う」
サポーターの魂の叫びがスタジアムに轟く。
何も考えず歌っていたチャントが、本当に深い意味を持つように感じた。
反撃に出た熊本がカウンターを狙うが、逆に奪い返しFKのチャンス。
高木善朗とドウグラスがゆっくりと時間を使い、ついに待望のホイッスルが吹かれた。
勝った!
久々のラインダンス。
「皆さん、お待たせしましたー!」
田村の絶叫。
勝利ってこんなに苦しくも嬉しいものなんだ。
勝てなかった1ヶ月と少し、それでも信じ、後押しし、スタジアムに足を運んだ。
インタビューで「サポーターの声が力になった」と言ってくれたドウグラス。
この勝利は、全員の力で掴んだ勝利。
そう、ゴール裏は、
世界で一番諦めの悪い場所なのだから。
