「貴様…!!」
「教団?宗教?そんなもの知らぬ!そんなもの、ワシにとってはどうでも良いわ!!」
「この…イカレた老いぼれが…!」
「なあ小僧よ…お前は太古の、21世紀の江の島の太陽を見たことはあるか?」
「過去への時間旅行は4327年、地球連邦政府が禁止した!それは航時法第27条4項に明記されている!」
「そうだろうなぁ、お前の歳じゃ見たこともないだろうなぁ…」
「…何が言いたい?」
「ワシはこの目で見た…いや、とても見ることが出来なかった…人々は皆サングラスをしておったよ。なぜだか分かるか?太陽が眩しすぎて直視できんからじゃ」
「…」
「太陽の光が海を青く染め、太陽の熱が浜を灼熱に焼き、空にはカモメが鳴き、海には魚という魚が満ち溢れ、人々は嬉々として日光を浴びておったよ。生けとし生けるもの全てが皆、太陽を謳歌しておった。美しかった…」
「…」
「ワシが動くのは教団の為ではない!ただ信じたいからだ!太陽は死んでなどいない!いつの日か、いつの日かまた太陽は輝きを取り戻してくれる!太陽は熱を取り戻し、この地球にまた命をもたらしてくれる!ただただ、そう願いたいからじゃ!!」
「…」
「それを!それをお前のような青二才どもが簡単に太陽を消すと言う!太陽の代わりはいくらでもあるなどと平然と言ってのける!太陽の美しさも知らず!太陽の有難みも知らず!太陽がどれほどの恩恵をこの地球にもたらしてきたかを知ろうともせず!!」
「…」
「コンピュータがはじき出した確率?笑わせるな!お前らのような数字の奴隷が地球を滅ぼす!数字の奴隷が人類を滅ぼす!数字の奴隷が全ての命をこの世界からまさに今この瞬間に滅し去るんじゃ!!」
「黙れ!!」
「ぐはぁ!!」
「黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れぇええええ!!」
「…」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
「…」
「…死んだのか?」
「…」
「死んだか…最期まで愚かなじじいだ…」
「…」
「太陽の美しさなど…太陽の有難みなど…そんなものはどうでもいい。所詮は非生産的な過去のノスタルジーに過ぎない。科学が、計算が、確率だけが人類を救う!数字だけが人類を救うんだ!!数字以外の一切は不要!数字以外の一切は無価値!数字以外の一切は崇高なる人類史にとっての不純物!!我々は…我々は間違っていない。決して間違ってなどいないぞ…」
「…」