『サザエさん』といえばご存知、お茶の間でお馴染みの国民的アニメである。さて今日でこそ『サザエさん』は「古き良き時代の家庭像」を描いた作品として広く認知されているが、連載開始当時の時代背景に照らし合わせた時、果たしてその認識は本当に正しいのであろうか。俺はこれに異を唱える。
まず『サザエさん』において目を見張るのは、登場人物の高学歴である。波平は京都大学卒、フネは日本女子大学卒、マスオは早稲田大学卒、ノリスケに至っては東京大学卒だ。『サザエさん』が連載開始されたのは1946年、当時の大学進学率は10%未満であり、作中人物の学歴はその頃の世相を反映しているとは到底思えない。さらに『サザエさん』の舞台は東京都世田谷区とされているが、1946年といえば終戦の翌年だ。当時の一般家庭が都内に1戸建てを構えることが果たして出来たであろうか。いやそもそも終戦直後の段階で、東京都内にがれきも焼野原もないきれいに舗装された住宅街や近代的なオフィス街など存在しただろうか。答えは否である。
以上より『サザエさん』は連載開始時点において、「理想の近未来の家庭像」を描いた作品であったと推測する。恐らく作者の故長谷川町子氏は、『サザエさん』に日本の将来の平和と発展の願いを込めて執筆したのであろう。天国の氏の目に、果たしてこの令和日本はどう映るのだろうか。