この歳になり今更ながらにしみじみ思うのは、公私を問わず他者と良好な関係を築こうとするならば、その大前提として人に対し誠実でなくてはならないということだ。
誠実であることとは、例えば嘘はつかない、約束は守る、相手によって態度を変えない、自分に非がある時はそれを認め謝る等だ。これらは幼稚園児でも知っているようなことであるが、それをきちんと実践できている人は意外と少ないのではないか。
例え誠実であっても人に好かれるとは限らない。しかし人に好かれる人はすべからく皆誠実である。
とは言ってみたものの実際のところ、不誠実な人間が人を惹きつける例を全く見てこなかった訳ではない。不誠実でありながら人に好かれる要素、それは一種のカリスマ性と呼んで良いだろう。例えば極めて弁に長けていたり、仕事の能力に優れていたり、あるいは性的魅力に溢れていたり等である。
しかし幸運にもそのようなカリスマ的要素を備えている人間は、残念ながら極々一握りに過ぎない。また、誠意ではなく能力一辺倒で人を惹く者は、往々にして多くの敵を作るのも事実である。
結局のところ、一握りではない大多数である我々が他者に好かれたいと望むなら、正直者は馬鹿を見ると自己懐疑しつつも、やはり誠実さを一つ一つ積み重ねていく他にないと思うのだ。