音もなく気配もなく”それ”は蠢き出す夜の狂気がとばりとなって街を覆う 木々がざわめく 家々がざわめく そして音もなく気配もなく ”それ”は蠢き出す ”それ”は窓辺から静かに侵入し 無数に這い回り 部屋の床を浸していく 始めは伺うように やがて我が物顔に そして”それ”はベッドを這い上がり 手足の先から私の身体を侵していく やがて”それ”は胸に浸透する 息が出来ない 助けて――― ある人たちは”それ”を退屈と呼ぶ 私は”それ”を孤独と呼ぶ