未曾有の天変地異、そして人類絶滅。専門家・一般人を問わず、誰もが一度は想像し、身震いしたことがあるのではないか。巨大隕石の衝突、太陽活動の変化、気候変動、大規模火山活動。人類を死に至らしめるカードは、この自然界にいくらでも存在する。
人類にとってより現実的で確実性の高い脅威として、氷河期の再来が挙げられる。にわかには信じがたいであろうが、実は現在地球は、11万年前より始まった氷河期の真っただ中である。しかし氷河期は一様に寒冷な時期が続くのではなく、氷期と比較的温暖な間氷期が交互に訪れる。10万年の氷期が続いた後、1万年前から現在に至るまで我々は間氷期の中にいるのである。そして数千年から数万年の後、地球は再び氷期に突入すると考えられている。
仮に今氷期が訪れれば、人類の文明は確実に崩壊するであろう。しかしである。「文明崩壊」と「人類絶滅」は全く別の話だ。現在75億人の世界人口の大半が氷の世界で息絶えるであろうが、我々の先人たちが知恵を駆使して前回の氷期を乗り切ったように、世界人口の例えば0.1%、数百万人程度は氷期をたくましく生き抜くであろう。
そして再び間氷期が訪れた時、仮に人類が高い知能を維持したままそれを迎えたならば一体何が起こるか。「第2次科学文明」の構築だ。考えてみてほしい、間氷期が訪れた過去1万年間で我々が何を成し遂げたか。農耕を開始し、社会規範・倫理を確立させ、蒸気機関を発明し、高度テクノロジーを発展させ、そして人口を爆発させた。つまり地球規模で捉えたらほんの一瞬、わずか1万年程度の小康期間があれば、人類は何度でも科学文明を構築するポテンシャルを備えているのだ。
もっとも氷河期など比較にならないほどのとてつもない天変地異、例えばペルム紀末に生物種の95%を絶滅させた数百万年続く大規模火山活動などが起これば、文明もろとも人類は根絶するだろう。しかしそれまでの間、氷河期が訪れそれを乗り切る度に、人類は第2次科学文明、第3次科学文明を構築していくのではないだろうか。