遥か広大な宇宙の果てから超ミクロの量子の世界まで、森羅万象全てを知りたいと思うのが人間の性というもの。しかし世の中には、知らないままの方が幸せな事実も数多存在する。それは例えば日韓外交であり、三国志の史実、そしてティラノサウルスである。
ティラノサウルス、恐竜ファンでなくともこの名を聞いたことがないという人はまずいないだろう。ティラノサウルスといえば最大最強の肉食恐竜であり恐竜界No.1のヒーロー、『ジュラシック・パーク』や『映画ドラえもん』でもその勇猛な悪役ぶりに胸踊らせた人も多いはず。しかし近年の研究で、このティラノサウルスの”最大最強説”が揺らいできているのである。
(1)ティラノサウルスは鈍足だった!?
ティラノサウルスの全長は12m、体重は6t。この巨体を支えるには、後ろ足があまりに細すぎるのだ。よってティラノサウルスは二足歩行で歩くのがやっと、最強のハンターどころかとても走行は出来なかったという。
(2)ティラノサウルスは恐竜の死骸を漁っていた!?
次に着目すべきはティラノサウルスのあまりに強靭な顎。その強さは既存の最大級のワニの10倍である。生きた獲物の新鮮で柔らかい肉を噛み切るのに、ここまで強力な顎は必要ない。ならばなぜティラノサウルスの顎はこれほどまでに発達したのか。それは恐竜の死骸を漁って腐乱した肉ではなく栄養価の高い脊髄を噛み砕いていたからである。
(3)ティラノサウルスは最大最強ではなかった!?
ここまでの話は、単にティラノサウルスが狩りが不得意だったという説の裏付けであり1個体の強さには言及していない。仮に肉食恐竜同士が1対1で戦ったらやはりティラノサウルスが最強であろう。俺もそう信じたかったのだが、近年の発掘と研究でティラノサウルスを上回る体格の肉食恐竜が続々と発見されてしまったのだ。全長13mのギガノトサウルス、14mのカルカロドントサウルス、そして極めつけが全長17m、体重20tのスピノサウルスだ。さすがのティラノサウルスも体重差3倍以上のスピノサウルスが相手ではひとたまりもなかっただろう。
以上、「ティラノサウルス恐竜界最強という幻想の崩壊」であった。ティラノサウルスこそが最強の肉食恐竜だと信じること、それは実際には軍事が不得手だった諸葛孔明を天才軍師と崇めることに近いのかも知れない。まあそれも個人の自由、実際に歴史の現場を見て来た人はいないのだから。