2005年、アニメ『ドラえもん』第二期突入。スタッフもキャストも一新、国民的人気長寿アニメをゼロから再構築するという、恐らく日本アニメ史上類を見ないであろう壮大にして壮絶な試行錯誤の12年、そして今日の『ドラえもん』はある。番組改編当初あちらこちらで囁かれた現ドラえもん声優水田わさび氏に対する聞き苦しいバッシングも、同作が再び積み重ねてきた歴史と実績によってようやく払拭されたと言えよう。そこで今日は、あらためて『ドラえもん』の主要キャラクター5人、ドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫の現在の作中における位置付けの是やら非やらについて、個人的に思うところを述べていきたい。
まずは『ドラえもん』の2人の主人公、ドラえもん、のび太。ストーリー進行の軸となる両者の掛け合いであるが、第一期においてはのび太が日常の苦難から救済を求めてドラえもんを頼り、ドラえもんがのび太の保護者的立場からこれを助けると言った展開が主であったのに対し、第二期ではのび太が突飛な思い付きをドラえもんに告げ、ドラえもんがこれを諫めつつものび太の遊び心を実現させるといった模様が多々見られようになった。改編前と比べるとのび太のダメ少年要素、ドラえもんの教育係要素が軽減されるという若干の変化はあったが、それはそれで設定に過度に捉われることなく気軽に楽しめる作風に仕上がっているのではないか。また、のび太とドラえもんの「任務を越えた絆で結ばれた親友」という関係性が改編後も変わらず保全されている点にもとても安心させられる。
◆日本を代表するアニメといえば?
(「gooランキング」より)
1位 ドラえもん 3815票
2位 サザエさん 2856票
3位 ONE PIECE 2304票
4位 ドラゴンボール 2088票
5位 それいけ!アンパンマン 485票
6位 鉄腕アトム 468票
7位 名探偵コナン 444票
8位 ポケットモンスター 420票
9位 ルパン三世 366票
10位 宇宙戦艦ヤマト 315票 ※以下略
しかしながら、やや残念に思えるのがしずか、ジャイアン、スネ夫である。改編前の『ドラえもん』において、しずかは度々登場した入浴シーンに象徴されるようにほのかな色美を感じさせる少女、そしてジャイアン、スネ夫はのび太の天敵ともいうべきいじめっ子であった。『ドラえもん』作者故藤子・F・不二雄氏にとって少年期のエロティシズム、自身の子供時代のいじめ体験は、ほぼ全ての作品に共通する普遍的なテーマであった。『ドラえもん』のアニメ化に際しては、藤子F氏はしずかのキャラクターデザインに何度も注文を出したという逸話まである。しかし『ドラえもん』第二期においては、しずかのエロティシズム要素、ジャイアン、スネ夫のいじめっ子要素は丸く削られ、もはや彼らはただののび太と仲の良いクラスメートになってしまった。もっとも、それはあながち否定材料とばかりも言えない。教育的観点からより安心して子供に観せられる良作になったと言うことも出来よう。けれど俺などは、必要悪から学ぶ教訓もまた多いのではないかと思ってしまうのだ。
変わらぬものを求める声、より良きものを求める声、その双方に応えることは言うまでもなく決して容易いことではない。連載開始50年、テレビ放送開始40年、その時代時代の中で一体どれほど困難な要求が『ドラえもん』に投げかけられてきたことだろう。しかし作者藤子・F・不二雄氏の逝去、そして此度のスタッフ・キャスト一斉交代、それでも『ドラえもん』は裏切らず『ドラえもん』であり続けた。だからこそ俺は、のび太がドラえもんにそうするように、『ドラえもん』にはついわがままを言ってしまう。「懐かしく、より進歩的であってほしい」と。