例えば今、どこまでも地下深く穴を掘るとする。
地殻を越え、外部マントル、内部マントルを越え、中心核も通過して、ついには地球の反対側、ブラジル沖まで到達。全長1万2700km、地球トンネルの開通だ。
尚、地球中心付近に集まる膨大な量の空気の巨大な抵抗を考えなくて済むよう、トンネル内は真空を保つものとする。
そしてここで人が入れる大きさのボックスを用意。これを地球エレベータとする。エレベータはトンネル内を、等速直線運動で進む。
その地球エレベータに体重70kg重の俺が乗り込み、ブラジル沖を目指して地球トンネルを降下開始。
さてこの時、エレベータ内の俺の体感重力、具体的には俺の体重はどう変わるのだろうか。
地球の中心までは重力は地表と同じく下向き、そして中心核を通過したらこんどは重力は逆向き。それくらいなら容易くイメージしてもらえるだろう。
けれどエレベータ内で中心核までは下向きに体重70kg重、そして地球の中心で一瞬フワッと体重0kg重になり、今度は逆さ向きに体重70kg重。
思うにこれは、あまりに不自然だ。ならば一体、地球エレベータ内の体感重力はどのように変化するのだろうか。
さて、これから少々数式をいじる。目で追うのがメンドイ人は、この章はサクッと読み飛ばして欲しい。
エレベータ内の俺が感じる重量加速度をg、重力定数G、地球の質量をМ、俺の(体重ではなく)質量をm、地球中心からの距離をRとすると、
g=GМm/R^2 ……(式1)
地球の体積をV、また計算簡略化のために地球の密度が均一であると仮定し、それをρとするならば、
М=Vρ=(4/3)π(R^3)ρ ……(式2)
(式2)を(式1)に代入。トンネル降下中の俺の体感重力は、
g=[Gm/R^2]×М
=[Gm/R^2]×[(4/3)πρR^3]
=(4/3)πGmρ×R
(4/3)πGmρが一定であるため、俺の体感重力gは地球中心からの距離Rに比例して弱まっていく。
よって地球エレベータ内の俺の体重は日本の地表で70kg重。
その後等速でトンネルを降りていくにつれて60kg重、50kg重と軽くなっていき、ついには地球の中心で0kg重。
そして今度は上下反対に、10kg重、20kg重と少しずつ体重が増え、地球の反対、ブラジル沖に着く時に70kg重に戻るのだ。
以上、最後までお付き合い感謝。