俺の出身高校は、県内随一の進学校であった。進学校の生徒の皆が皆、眼鏡をかけ電車の中で英単語帳を常備している訳ではない。むしろ9割方が愛すべきアホ共である。
しかしほんのごく一握り、中二病をこじらせた上にガリ勉属性が加わったイタイ子たちが確かに存在する。彼らは往々にして自身の能力について自尊心が高く、そして自己顕示欲が異様に強いからタチが悪い。
さて高2の時、俺はクラス代表として校内スピーチコンテストに出場した。各クラス代表30数名の中から予選で本戦出場者6人を選び、そして本戦では全校生徒の前でスピーチ、一般生徒の投票を以て得票数で優勝者を決するというものだ。俺も無事予選を通過し本戦へ。
そしていよいよ決勝の舞台裏、出場者の一人がぶつぶつ独り言をつぶやいている。いや、独り言と見せかけて、わざと周りに聞こえるような声で何か言っているのだ。「はてさて、本番では一体何の話をしようかな」。
うぜえ、コイツめちゃくちゃうぜえ。「自分には原稿の用意など必要ありません。アドリブで何でも話せちゃいますよ」アピールだ。「はいはい、それは凄いですね」などと誰が言うか、うぜえ。
しかもそれは間違いなくハッタリ、各自原稿なくして本戦出場できるほどスピーチコンテストは甘くない。そもそもコイツはコンテストの主旨を勘違いしている。「アドリブか原稿かなど加点にも減点にもならんわ。そしてこれは出場者同士で威嚇し合う勝負ではない、出場者が聴衆に訴えかけるコンテストだろが」。
それを証明してやった。俺は自筆の原稿を原稿通りに読んで、その年のコンテストでぶっちぎりの票数で優勝。もう一度言う、自筆の原稿を原稿通りに読んでな。