木漏れ日の5月。優しい日差しに呼応するかのように、湖面は光を帯びたたえていた。
湖を一周するランニングコースは全長1200m。そこには体力作りに勤しむ中学生、ウォーキングをする老夫婦、様々な人たちがそれぞれの時を歩むように、静かなる湖のほとりを周っていた。
そんなランニングコースのとある地点、ここではP地点と呼ぶことにしよう、そのP地点でランニングをする太郎くんと自転車に乗った花子さんがすれ違った。
それは偶然だろうか、必然だろうか。このような形で太郎くんと花子さんが出逢うことなど、誰が予想し得ただろうか。いや、運命というのは案外そんなものなのかも知れない。
太郎くんは時速12kmのペースでコースを右回りに走っていく。仮に彼が陸上選手であるならば、それは決して速いとは言えないだろう。しかし、彼はそうではなかった。
165cm、78km。それが太郎くんの体型だ。お世辞にも標準的とは言えない。彼はその太めの体型がゆえに、心ないクラスメートたちにからかわれていた。
少しでも痩せたい、周りを見返してやりたい、それが太郎くんがランニングが始めたきっかけだった。
一方花子さんは自転車に乗って、時速24kmのペースでコースを左回りに走っていく。雲一つない爽やかな晴天とは裏腹に、花子さんの表情はどこか翳っていた。
1週間前、花子さんは彼氏から別れを告げられた。新しく好きな人が出来た、それが彼の一方的な理由であった。彼との4年間は、突然そんな身勝手な理由で断ち切られたのだ。
以来、花子さんは学校にも行かず、一人部屋にひきこもって過ごしていた。
けれどこのままじゃいけない、せめて外出しよう。行くあてもなくひたすらに自転車を漕ぎ、そして彼女がたどり着いたのが、この湖のほとりのランニングコースだったのだ。
ともに心に傷を負った太郎くんと花子さん、2人は再びすれ違うことになる。それはP地点から右回りに400mの地点であった。
さて、次に太郎くんと花子さんがすれ違うのは、P地点から右回りに何mの地点であるか求めよ。
(答え)800m