思うにドラえもんの声優とは、日本の声優界における最高の栄誉職の一つだ。『ドラえもん』について述べるならばもう一方の雄、当然『サザエさん』への言及も忘れてはならない。しかし『ドラえもん』と『サザエさん』の大きな違い、それは『ドラえもん』という作品には絶対的象徴たるキャラクターが登場することだ。言わずもがな、ドラえもんである。
今から11年前の2005年、『ドラえもん』ファンの間に、いや日本のアニメ界に激震が走った。『ドラえもん』声優陣一世交代である。そして新たにドラえもんの声優に抜擢されたのが当時30歳、声優として全く無名だった水田わさびだ。俺は思ったものだ、「無名声優から一気に日本の声優界のトップじゃねえか。まさにシンデレラ・ストーリー、これぞジャパニーズ・ドリームだろ」。
◆日本を代表するアニメといえば?
(「gooランキング」より)
1位 ドラえもん 3815票
2位 サザエさん 2856票
3位 ONE PIECE 2304票
4位 ドラゴンボール 2088票
5位 それいけ!アンパンマン 485票
6位 鉄腕アトム 468票
7位 名探偵コナン 444票
8位 ポケットモンスター 420票
9位 ルパン三世 366票
10位 宇宙戦艦ヤマト 315票 ※以下略
しかし実際のところ、水田わさび自身はどのような心持ちだったのであろうか。何せ前任はあの伝説的声優、『ドラえもん』作者・故藤子・F・不二雄をして「ドラえもんとはこういう声だったんですね」と言わしめた逸話を持つ大山のぶ代である。当然ながら巻き起こる新声優陣に対する猛バッシング、それは今尚完全には消えていない。この11年、水田わさびがどれほどの重圧と闘ってきたのか、それは本人にしか分からないことだろう。
例えば神様の気まぐれか、それとも故藤子F氏の導きか、もしも水田わさびと話す機会が与えられたならば俺は彼女に言いたい。「たとえどんなに前任者が偉大でも、もうアンタ以外にドラえもんはいないんだ。俺は20年後、30年後もアンタの声で『ドラえもん』を観るぜ」。