遠い遠いいつか、もう忘れてしまいそうなほど大昔、
俺は確かに勉強が出来た。
そんな俺の前に常にライバルとして立ちはだかったのが、
今でも深く親交ある友人・某氏だ。
中学時代、俺と某氏は学年1、2を競い合い、
そしてともに県内随一の進学高へと進んだ。
理数科目の俺、文系科目の某氏、
まさに対照的な能力値。
俺たちはともに切磋琢磨する中で、
口にせずとも互いに互いをリスペクトし合っていた。
しかし運命の女神は、時に残酷な微笑みを浮かべる。
某氏は見事早稲田大学合格、
現在は某一流企業の法務課に籍をおき活躍。
一方俺は大学受験、就職活動ともに失敗。
職を転々として今に至る。
けれど受験から離れ10数年、今でも某氏は俺に言う。
「もしお前が受験で実力を出し切っていたなら、
間違いなく早稲田に受かってた」
”過去の栄光”、
それは胸に秘めるだけ惨めなものであろうか。
もしそこにいるのが自分だけであれば、
そんな安いプライドは犬にでも喰わせちまえばいい。
しかし”過去の栄光”、
その構成因子は決して俺一人ではない。
某氏やその他、競い合い歓喜をともにした仲間たちだ。
ならばどんな十字架でも俺は切り捨てることは出来ない。
”過去の栄光”とともに未来を歩もう。