赤い月が水面を照らす。
呼応するように、さざ波はガーネットのように煌めく。
捨ててしまいたい、何もかもから逃げ出した。
私はただ一人、あてもなく海岸線を歩いていた。
浜辺に腰をおろし、波音に耳をすます。
そっと目を閉じ、今静かに夢想にふける。
真紅の海に沈む。
やがて停止する私の身体を、優しく水流が包み込む。
呼吸は果て、鼓動も尽き、
私は私を形成する全てを、母なる源へ返す。
薄れゆく意識の中、最期に私が目にする光景は、
どんなにか幻想的で、そして破滅的だろう。