大学時代のクラスに、どえらい美人がいた。
ここでは甲女史と呼ぶことにするが、
甲女史は、今すぐ芸能オーディションを受けてもおかしくない!
まさにクラスの女子の中では別格的存在!
俺ごときに言わせるならば、
高嶺の花どころか、エベレストの雪であった!
しかしクラスの中には、実に勇敢な男たちがいるものだ!
いや、勇敢というより身の程知らずか?
何人もの男子が甲女史に告白、揃ってあえなく撃沈!
無論、甲女史に一点の非もない!
好みじゃなかったか、あるいは彼氏を作る気自体なかったか。
ところがだ!立て続けにフラれた男たちの間に、
それこそ根も葉も地下茎さえもない、デマが流れ始める!
「甲女史はお高くとまった、性格最悪女!」
噂と言うのは実に怖い!
尾ひれ背びれがついて誇大、瞬く間にクラス中の男子に浸透!
かくして、誰もが認めるNo.1の美貌を持ちながら、
甲女史は不遇な大学生活を余儀なくされたのであった。
さて当時、まだJRには喫煙所が設けられていた。
ある時、大学からの帰路、
俺はタバコを吸いに、大学の最寄り駅の喫煙所へ。
そして遠目でバッタリ甲女史と遭遇!
甲女史は大学の喫煙所ではなく、
まるで身を潜めるように駅のホームでタバコを吸っていた。
大学の居づらさか、それとも更なるイメージ悪化を恐れてか、
こんな所でタバコを吸うしかないなんて!
甲女史と一瞬目が合ったが、俺は瞬時に目を逸らした。
今のは見なかったことにするよ。
今日は喫煙所は譲るから、心ゆくまでゆっくり吸いな。
それにしても…
美人過ぎるのも、それはそれで大変なんだね。