【妄想劇場】 政治フィーバー | まきしま日記~イルカは空想家~

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ちゃんと自分にお疲れさま。

男性アイドルグループのメンバー、エスが、
たどたどしく来年度予算案を読み上げる。

「平成××年度予算案は、ええっと…
…以上です」

女性アイドルたちが、こぞって黄色い声を上げる。
「異議なし!」
「異議なし!」
「異議はありませーん!」

ここで若手芸人が、
お約束通り声を張り上げる。
「ちょっと待った!異議あり!」

すると、天井からタライが落ちてくる。
「イデッ!!…はい、異議はないです」

なんてことはない、
彼らはただ、官僚たちが書いたシナリオ通り演じているだけだ。

そしてこのエスこそが、
現在の内閣総理大臣なのだ。

。。。。。


J党とM党の政権争いは、熾烈を極めた。

度重なる討論、誹謗中傷合戦、
そしてうんざりするようなネガティブキャンペーン…
J党とM党の争いは、泥沼化の一途をたどった。

しかし、なんと皮肉なことだろう。
二大政党の争いが過熱すれば過熱するほど、
国民の政治的関心は薄れていくのだ。

選挙の投票率は、
ついにひと桁台にまで落ち込んだ。



するとJ党が、奇抜な手に打って出た。
与党総裁に、現役のタレントを据えたのだ。

するとどうだろう。
ジリ貧だった内閣支持率は、80%台にまで跳ね上がった。

M党も負けじと、
トップアイドルを総裁に据えた。

たちまちのうちに、
国民の間に政治フィーバーが巻き起こった。



これに目をつけたのが、
民放のテレビ局だった。

一回の国会中継の放映権を獲得するために、
何十億という金が動いた。

すると、なんということか。
国が抱えていた財政難はたちどころに解消された。

やがて国営のN局は、
大晦日にJ党とM党の対抗歌合戦を放送するようになった。

いまや、二大政党に入党し年末の歌合戦に出場することは、
若手歌手たちのステータスとなっていた。

。。。。。


この日の国会中継の視聴率は、23%だった。

永田町では、
官僚たちが緊急会議を開いていた。

「駄目だ、エスを総裁にしてから、数字が落ち込んでいる。
次の総裁選には、新鋭アイドル女優ティーを出馬させよう」