中流家庭の病をコミカルに描く

 パーツはありきたりなのに、何かがまったく新しい。
『アメリカン・ビューティー』には、そんな方程式が働いている。
アメリカ郊外の中流家庭が送る空虚な日常…とくれば、半世紀前からおなじみのテーマ。
しかし才気あふれる脚本家アラン・ボールが扱うとなると話は違う。
 主人公は冴えない中年男レスター(ケビン・スペイシー)。
妻(アネット・ベニング)と高校生の娘には軽蔑され、会社ではリストラの対象になっている。
そんな男が、娘の同級生アンジェラ(ミーナ・スバーリ)に一目ぽれして豹変。
いかれた欲望に力を与えられた彼は会社を辞め、筋トレに励み、マリファナを吸いまくる。
失うものはもう何もない。
 実にコミカルな映画なのに、不意に感情のパンチが飛んでくる。
登場人物が型にはまっているきらいはあるものの、鼻につく寸前で、血の通ったリアルさを放つ。
『アメリカン・ビューティー』が描くのは、郊外というものが誕生して以来、アメリカの中流家庭をむしばんできた病だ。
人々の幻想は膨らみ続け、現実との溝は深まる一方。
この作品の素晴らしさは、そんな病を巧妙なエンターティンメントに仕立てたことだ。

【2000.5.17】
監督/サム・メンデス
主演/ケビン・スペイシー
   アネットベニング