『前がん病変(高度)の疑いあり』
「私、”がん”なんだ・・・。
死んじゃうのかな。」
人間ドックの診断結果を持つ手が震える。
健診センターからの封筒は母がベッドの上に置いたはず。
何もなかったことにはできない。
とにかく母には事実を伝えないと・・・。
「お母さん、私、がんになっちゃったかも・・・。」
隣の部屋で髪を乾かしていた母にポツリと伝えた。
驚いた母は恐る恐る私から診断結果を受け取る。
どれだけの沈黙があったのかはわからない。
時間が止まるって、こういうことを言うんだと思う。
「まずは精密検査を受けてみないと、どうしようもないじゃない。
今日は金曜日で土日は健診センターもやってないし。
とにかく今日は寝なさい。
明日もイベントなんでしょ?」
「・・・わかった。」
頭が真っ白のまま、自分の部屋に行こうとドアを握ったとき、
「一緒に寝る?」
母からそんなことを言われたのは生まれて初めて。
35歳の娘に言うような言葉じゃないと思うけど(笑)
その時は母も怖かったのだと思う。
自分の娘が”がん”かも知れないっていうことが。
「いや、大丈夫だよ。おやすみ。」
それだけ言って、私は部屋のドアを開けた。