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基礎知識 その9

3.テロ治安動向

1)モロ・イスラム解放戦線(MILF)との関係では、エストラーダ政権期には全面戦争の姿勢で臨み、ミンダナオを中心に国軍との衝突やMILFの犯行とされる爆発事件が頻発していたが、アロヨ政権は、2001年よりマレーシアの仲介で和平交渉を開始。その後、有力一族同士の争い等で正式和平交渉は中断したものの、非公式交渉が続けられ、20037月、フィリピン政府とMILFは停戦合意を締結した。さらに、200410月にマレーシアを中心とする国際監視団がミンダナオに派遣されて以降、治安状況は大きく改善。これを受けて、20067月、我が国は、フィリピン政府及びMILFの要請を受ける形で、国際監視団に新設された社会経済開発部門への参加を決定した。20069月の協議において、長年の懸案である土地問題について、フィリピン政府とMILFの立場が対立し、交渉は再び難しい局面を迎えている。しかしながら、両者は和平プロセスを重視し、協議を継続している。

2)イスラム系過激派組織アブ・サヤフ・グループ(ASG)は、外国人誘拐や爆破事件に関与(2004年のマニラ湾沖で大型客船フェリー爆破事件、2005年のマニラ首都圏、ダバオ、ジェネラル・サントス連続爆破事件)。ジェマ・イスラミーヤ(JI)との連携も指摘されている。フィリピン政府は、米国の協力を得てテロ対策能力向上を図りつつ、掃討作戦を展開中。

3)共産勢力(CPP/NPA)はフィリピン全土で企業襲撃等の活動を行っており、フィリピン政府は治安上最大の脅威と見なしている。20028月、欧米諸国が国際テロ組織に指定し、資金凍結措置を講じてから、国内での活動が活発化。20048月以降、フィリピン政府との和平交渉は中断している。さらに、フィリピン政府は、20068月より国軍・国家警察の配置を見直し、掃討作戦を強化している。

4.最近の経済動向

1)財政収支は1998年に赤字に転落。その後、2002年をピークに対GDP45%の赤字で推移。2005年は1,465億ペソの赤字であった。2006年は堅調な歳入と歳出抑制により、目標の1,250億ペソ(対GDP2.1%)のほぼ半分の水準の622億ペソ(対GDP1.0%)となった。

22005年は、原油価格の高騰及び農業の不振でインフレ率は7.5%。実質経済成長率は5.1%で、個人消費に牽引されて6.1%を達成した2004年に比べ、減速したが、当初予想を上回った。

3)財政赤字解消はアロヨ政権の最重要課題。2008年までの財政均衡達成を目標に、税制改革や徴税強化等の歳入改善策と予算執行の厳格化等の歳出抑制策に努めている。税制改革では、20062月、800億ペソの税収増が期待される付加価値税の引き上げ(10%→12%)がなされた。

4)公的債務は4兆ペソ超。特に、国家電力公社の債務は深刻で、電力料金の値上げ、発電資産の売却及び送電部門の民営化による債務解消を図ろうとしているが、進捗状況は予定より大幅に遅れている。

5)貿易収支は、赤字基調。中間財・資本財、石油等鉱物燃料及び消費財等、輸入への依存度が高い。2005年は、原油高の中、原油等、鉱物燃料の輸入が前年比33.2%増となり、貿易赤字は前年比約20%増の89億ドルを記録した。他方、海外労働者の送金が極めて大きく(2005年は107億ドル)、所得、経常移転の合計は大幅黒字を計上し、経常収支は黒字を維持。

6)資本収支は、2004年以降、赤字。財政問題、治安、脆弱なインフラ等、投資環境の不備が背景とされている。対内直接投資は、近年56億ドルと低迷していたが、2005年は11億ドルに回復。また、外債や株式等ポートフォリオ投資も拡大。2004年の8億ドルの投資流出から、2005年は約40億ドルの投資流入となり、資本収支は8億ドルの黒字を計上した。

基礎知識 その8

2.最近の内政動向

120011月、エストラーダ大統領退陣によりアロヨ副大統領が大統領に昇格。20045月の大統領選挙では、現職としての組織力・資金力を活かして、アロヨ大統領が3%(約100万票)の僅差で、国民的人気俳優の野党候補に勝利した。

2)アロヨ大統領は、就任以来、貧困対策やテロ・治安対策を重視してきた。20046月末の政権発足に際し、今後の課題として「10ポイント・アジェンダ」を掲げ、特に、財政赤字解消を含む行財政改革、反政府勢力との和平、与野党や社会階層を超えた国民融和による政権の安定を強調した。さらに、2005年からは、従来の公約であった憲法改正に本格的に取り組んでいる。

320056月、前年の大統領選挙でのアロヨ大統領の選挙不正疑惑が浮上し、政権への不満が一気に表面化。同年7月、主要経済閣僚が大統領辞任を要求して辞職し、下院では大統領弾劾請求が提出された。その後、同請求は却下され、辞任要求運動は沈静化した。しかし、20062月、アロヨ大統領は国家安全保障上の危機を理由に「非常事態」を宣言。デモ封じ込め、国軍の掌握、左翼系議員の逮捕等で、不安定化要因をとりあえず一掃し、宣言は1週間後に解除されたが、強権的手法への反発が強まった。20067月、前年の弾劾請求から約1年が過ぎ、憲法上、再度弾劾請求提出が可能になったことから、野党陣営及び市民団体は弾劾請求を下院に提出したが、8月下旬、下院本会議で却下された。その後、情勢は急速に収束し、大統領に対する辞任要求の動きは見られないが、200611月の世論調査におけるアロヨ大統領の支持率は34%で、歴代の政権と比較しても低い水準で推移。

42005年の政局混迷の最中、アロヨ大統領は、憲法改正を提案。同年9月、大統領令にて憲法諮問委員会を設置し、同年12月、改正案が提出された。同改正案のうち、外国投資を制限する国家主義的な経済条項については、改正すべきとの意見が強いが、議院内閣制の導入、連邦制、一院制については立場が分かれる。特に、上院は一院制導入により下院に統合される見込みのため、消極的。大統領支持派の地方自治体の首長は、改憲賛成の署名を集めて、改憲の必要性を問う国民投票を発議しようとしたが、200610月、最高裁は具体的法律の欠如を理由に却下。その後、同年12月、下院与党陣営は上院を無視して、改憲手続を加速化し、20075月の中間選挙の延期と現職議員の任期延長を含む改憲案を下院本会議に提出。しかし、国民の強い反発を呼び、議会を通じた改憲手続を進めることを断念。結局、上下両院は、民間の有識者を中心に構成される「憲法改正評議会」を通じて改憲を進めることで合意した。なお、同年11月実施の世論調査では、国民の約7割が憲法改正に反対と回答している。

基礎知識 その7

最近のフィリピン情勢と日・フィリピン関係

平成192

1.フィリピンの特徴

1)国土

194674日、フィリピン共和国独立。
独立時の大統領はマニュエル・ロハス(ロハス現上院議員の祖父)。
面積約30万平方キロメートル(日本の80%)。7,109の島々からなる島嶼国家。

2)人口及び種族

8,290万人(うち、マニラ首都圏は約1,000万人。2004年世界銀行データ)。
マレー系が主体。他に中国系、スペイン系及びこれらとの混血、少数民族。

3)宗教

ASEAN唯一のキリスト教国。カトリック83%、その他キリスト教10%、
イスラム教5%(イスラム教徒の2割以上はミンダナオに居住)。

4)国家政体

立憲共和制の下、79州から構成。
国家元首は大統領(大統領は、国家元首であると共に行政府の長)。現大統領(第14代)はグロリア・マカパガル・アロヨ(父親は第9代大統領のディオスダド・マカパガル)。
議会は上下両院制。上院は全国区選出の24議席、任期6年で連続三選禁止。下院は250議席(20%が比例代表選出、残りが小選挙区選出議席)、任期3年で連続四選禁止。議会の権限のうち、条約の批准権は上院のみが有する。下院は予算先議権を有する。

5)名目GDP976億ドル(2005年、中央銀行、国家統計局等)

一人あたりGNP1,232ドル(2005年、中央銀行、国家統計局等)
1
ドル=約48.5ペソ、1ペソ=約2.5