旅芸人生活の移動中、何回かに分けてゆっくり読んだ本。

短編集というのは、こういう時にありがたい。

 

 

歸鄉

タイトル作。旧字体であることがまた重みを感じさせる。

終戦から時間が経って帰ってくると、こういうことももちろん起こりうる。

その辛さと、気丈にふるまう感じが・・。

 

鉄の沈黙

南方の島。もう終わりが見えている。

だけどもそれを口にしない。

 

夜の遊園地

戦後。野球終わりで隣接する遊園地に来る親子客。

価値観や生き方が変わっていく中、戦争体験で抜けないトラウマ。

父・母の生きざまに気づき、電話をする。

 

不寝番

タイムスリップ系。

1973年の自衛隊員と1942年の陸軍兵士。

自動販売機はそりゃ1942年にはないよな・・。

 

金鵄のもとに

鵄はみみずく、またはとびと読むらしい。

それに金が付くと果たして何と読むのか。「きんし」か?

ブーゲンビル島で玉砕したはずの「月7386」部隊。

「ジャングルの中で出くわして怖いものは、味方の兵だった」

この話が一番読んでいてつらい。

 

無言歌

これもつらかった。

「酸素を無駄に使う」という意味が最後になってわかる。

 

 

旅芸人生活では、自分も色々思う事があった。

体的にも疲れていたし、ストレスも溜めていた。

だけども、そんな日常を吹っ飛ばすくらい壮絶な時代のドラマに触れると、なんとなくシャンとする。

 

浅田次郎の短編ならまちがいない。

いつも助けてもらってます。