王子、小学5年生。

今度おたのしみ会で出し物をやるという。

 

父ちゃん、プリントアウトしてほしいのがあるんだけど。

え、なに?

 

それは自作のストーリーだった。

これに絵をつけて何人かで読む(演じる?)らしい。

 

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この度お話させていただきますは、吸血鬼の物語。

 

強くも美しく、恐ろしい悪鬼の伝説でございます。

 

昔々あるところに小さな街がありました。

小さな街には大きなお屋敷があり、

なんとそこには吸血鬼が住んでいたのです。

しかし、街の人は誰一人知りません。

吸血鬼は、毎夜毎夜.....街を歩いては、

出逢った街の人や動物たちの血をすすっていきました。

街の人たちは吸血鬼が恐ろしくて、

夜は街を歩くことさえできませんでした。

誰もが困り果て諦めていた時、

勇敢な若者が立ち上がり、

吸血鬼を退治することにしました。

若者は吸血鬼の住んでいるお屋敷を見つけると、

昼の間に黒い布でお屋敷をすっぽりと覆って、

 

「吸血鬼さん、もう夜ですよ」

 

と、嘘をつきました。

若者の声に起こされた吸血鬼は、

外がすっかり暗くなっていることに、

気がついてお屋敷の外に出ます。

 

「今だ!」

 

若者が一気に黒い布を剥がすと、

吸血鬼は太陽の光を浴びて消えてしまいました。

吸血鬼がいなくなったことで街の人は喜び、

夜までお祭りを続けました。

夜になっても騒いでいることに気づいた魔物たちは、

「しめしめ、あの邪魔な吸血鬼がいなくなったんだな」

と、ほくそ笑みその夜のうちにその街は滅んでしまいました。

「人間はなんて馬鹿なのでしょう」

真夜中に生き返った吸血鬼は何もなくなった街を見て、

とても悲しみました。

昔々、吸血鬼は街中の血を分けてもらうかわりに、

魔物から守る約束をしていたのです。

人を嫌いになった吸血鬼は今も血を求めて、

彷徨い続けているのです。

 

 おしまい♪

 

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原文ママ。

 

ほほぅ。

これ自分で考えたのか。

ちょっと気味は悪いけど、シナリオとしてはよくできてる。

これに絵を入れ、ピアノを入れるという。

おもしろくなりそうだ。

 

そういえば・・

自分、小学3年生の頃・・

 

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11月に転校してしばらくたった時、おたのしみ会があった。

班ごと(6人×6)で出し物をし、投票で優勝の班を決めるというもの。

 

自分は転校生。

誰も何も案を持っていない感じだったので、自分で出しに行った。

 

その頃、転入前からカブスカウトに入っていて、キャンプなどでこういう「スタンツ」を考え、みんなで演じるというのには慣れていた。

 

スタンツ?

それ以来、この単語を使ったことはなかったな。

スタンツ【stunts】〔「拍手を受けるような行為」の意〕

①組み体操。また、チアリーディングなどで組んで行う演技。

②パーティーやキャンプファイヤーなどでグループごとに披露する寸劇などの出し物。

 

なるほど。

そういう意味だったんだ。

 

カブスカウトでのそれは、いかにふざけて笑わせるかの競争だった。

ただ、下ネタなし、人の悪口などもなし、といったような暗黙のルールがあった。

 

シナリオを考えた。

タイトルは「ふしぎな学校」

 

脚本を書いて、教室をどう使うかを考えて、それぞれのセリフと演出を手掛けた(笑)

 

内容は・・ほとんど憶えてないw

ただその時の一瞬の情景として・・

 

先生役の自分が教壇の下に隠れて居眠りをしている間、生徒たちが走り回って遊ぶ。

フワーアと起きると生徒たちが大人しく着席する。

 

あれ?今だれか教室走ってなかったか?

いいえ。誰も走ってないよ先生。なぁ?

 

みたいな情景。

ある意味ドリフ的な感じ?

 

笑いは取れた。

ほかの5つの班の出し物が既存の演劇だったりしたのもあって、大好評だった。

 

そして投票。

クラスの人気者で、Y田くんという権力者がいた。

ジャイアンタイプでもないが、そこと仲良くしてるといいことがある的な存在。

彼はその班の劇の主役を務めていた。

 

その彼がいた班に、僅差で負けた。

内容では間違いなく聴衆の心をとらえたが、なにせこちらは脚本が新参者。

それでもかなりの票をもらえたのは嬉しかった。

 

最後の先生の講評でも、「いままでにない出し物だった。よかったぞ。

とお褒めの言葉をもらった。

 

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「ふしぎな学校」

転校生が思い切って新しいクラスに溶け込む、非常にいいきっかけとなった出来事。

カブスカウトに入っていたことを本当によかったと思えた。

そういう意味で、このタイトルは忘れない。