連載の最初の記事からちょっと時間が空いてしまった。裁判で余裕がなかったのが主な理由だが、この連載のテーマはますます重要になっているので、ちゃんと続けたいと思う。

 

 志位和夫氏は、野党共闘でつくろくとしている政府について、綱領の上では「さしあたって一致できる目標の範囲」での政府だと述べている(『新・綱領教室』下、126ページ)。共産党綱領では、日米安保廃棄などの基本政策で一致する「民主連合政府」が基本であって、野党共闘政権はそういうものではないのだ。

 

 これまで「さしあたって政府」を共産党が提案する場合、この『新・綱領教室』での言葉を再び借りると、「一過性の提案」だとされてきた。前回紹介した選挙管理内閣は、まさに選挙期間中しか存在しない政権である。あるいは、過去に「ロッキード事件の究明」とか「消費税の廃止」などを一致点にかかげた提案がされたことがあったが、それも一過性のものだと捉えられてきた。なぜなら、それらの課題を実現したらすぐに衆議院を解散し、共産党は安保廃棄の民主連合政府のために闘うと想定していたからだ。

 

 その過去の経験からすると、2015年に志位氏が提案した新安保法制を撤回するための野党の国民連合政府の提案も、やはり「一過性」のものだったと思う。だって、それを実現したら政府の使命は終わるし、いつまでも安保条約を堅持する野党政権が続いてしまえば、共産党の従来型の論理で言えば、野党政権も戦争する政権でしかなく、そんな政権に共産党としていつまでも関与できないからである。

 

 そして、その種のものなら、今回、小池晃氏が立憲に求めるほどのものはいらないのだ。新安保法制の廃止(その範囲は別として)だけが一致点だから、それ以上の「政策の一致」は不要である。基本政策が何も一致していない政党間の協力なのだから、「相互尊重」などと言っても笑われるだけだ。

 

 「対等平等」も不要だった。実際、この種の共闘として闘われた2016年の参議院選挙は、選挙区の調整だけが行われ、32の一人区での立候補の内訳は、無所属16、民進党15、共産党1と「対等平等」どころではなかったのである。どの選挙区で誰をどのように立候補させるかは、小池氏が今回は否定しようとしているが、地域にまかせるかたちで行われた。結果は野党共闘の11勝21敗で、その3年前の2勝29敗から大きく前進したことは記憶に新しい。

 

 共産党1というのが微妙なところだった。共産党の候補者では勝てる見込みがないけれど、ゼロでは協力にならないから、かろうじて合意したというところだろう。

 

 ところで今回、枝野氏が主張するように、地域ごとにまかせるやり方をとれば、共産党は1どころか300小選挙区の半数近く、約150人を立候補させられるだろう。だって、立憲の候補者がまだ150人くらいしかいないのだから、喜んでゆずってくれるはずだ。そうしたら、立候補者数で見ると、立派な「対等平等」である。

 

 それなのに小池氏は、昔の民主連合政府、綱領上の本格的な政府を実現しようとしてきた時の宮本顕治のような提案に固執している。なぜそんなことになるのかと言えば、やはり野党政権の綱領上の位置づけに関して、きわめて混迷しているからなのだ。(続)