遅ればせながら書いておく。選挙中に書こうと思ったけれど、共産党への異論が含まれていると選挙妨害だと言われるだろうし、もし負けたら「お前のせいだ」となりかねないので、結果が出るまで黙っておいた。いまなら、正直に書いても、敗北の責任を私がとらされることにならないだろう。

 

 教訓はいろいろな角度から考察が可能である。例えば、「オール沖縄」は全体が議席を減らしており、全体としての「オール沖縄」の低調という問題の分析が必要である。同時に、沖縄市と島尻区を見ると、共産党はその「オール沖縄」陣営のなかでも最下位となっていて落選している。「オール沖縄」の低調という角度だけでは説明がつかない問題だ。

 

 早くから心配はしていたのだ。SNSで私への共感を表明している地方議員などには、県党幹部がやってきて圧力をかけていた。選挙というのは、できるだけいろんな考え方の人に支持を広げるものだから、「こんな考え方は党と相容れない」という論調が党内で強まると、党外の人にもそう見えてしまう。私の除名後の「安保と自衛隊は絶対悪」という大キャンペーンは、安保・自衛隊に何らかの役割を認める人には付いていけないので、ただでさえそれらが争点になる選挙では不利に働いてしまうのだ。

 

 ただ、いくらなんでも、選挙の本番になれば、安保・自衛隊容認論者にも支持を広げるような政策が打ち出されるものと思っていた。それが、告示の日に裏切られることになる。 

 

 何かと言うと、告示日の志位氏の演説である。7日の演説全文が翌日の「赤旗」に載っているが、小見出しにはこうあった。

 

 「軍隊は住民を守らない」

 

 いまアメリカと日本政府が、沖縄を足場にして台湾有事での軍事戦略を構築しており、選挙戦でそれを批判するのは当然である。沖縄戦を体験した県民のなかに、「軍隊は住民を守らない」と強い感情を生み出したことも事実で、私は共産党の安保外交部長だった頃、沖縄でお話しする際は、党の自衛隊活用論をどう伝えるか、本当に気を遣ったものだ。

 

 志位氏の実際の発言も、それほど単純なものではない。けれども、党首が「軍隊は住民を守らない」と一般化し、それを見出しに立てるように「赤旗」編集局に指示してしまえば、防衛力さえ否定することが党自身の認識となり、県民に訴える政策となってしまう。とりわけ現在、党首が語った中身と一言一句違うことを語るようなことをすれば、「決定違反」となり、「党員としての誠実さに欠ける」ことになるので、党員は「軍隊は住民を守らない」と宣伝を広げていったのだろう。

 

 沖縄県民のなかでも、安保条約と米軍がもたらすさまざまな厄災を取り除いてほしいという気持ちは大半の人がもっているが、かといって安保廃棄の世論は過半数にはるかに届かない。大半の県民は防衛力の必要性を認めている。台湾や尖閣をめぐる中国の動きは現実に激しさを増しているので、ますますそういう世論傾向は広がっている。

 

 だから、沖縄県民を守る防衛力と外交力を打ち出しつつ、現在のアメリカと日本政府の動向がそれと逆行することを描くことが、本来、共産党が担うべき役割のはずである。そういう必要性を認めず、ただただ「軍隊は住民を守らない」というのでは、最初から防衛力さえ否定する何パーセントから県民のなかで支持を奪い合う結果になってしまうわけだ。

 

 最初に書いたように、選挙というのは、いろんな考え方の人に支持してもらい、投票してもらう闘いである。いろんな考え方の人を共産党と同じ革命思想に変革する闘いではない。その基本が、いまの路線では遠のいている。それが最大の教訓ではないのかというのが、私の感想である。