ご質問があったので、本論に入る前に、まずその点を。志位氏が私に自己批判を求めた根拠は、2000年の22大会での自衛隊活用論は安保廃棄後の方針を打ち出したものという点である。

 

 志位氏の論拠は、安保条約は侵略のためのものだという一点から発する。安保が残っている限り、日本が戦争するのはアメリカの侵略に協力する場合に限られるのであって、自衛隊を活用するのは侵略に加担することになるから活用などとんでもない、というものだった。

 

 この論理のおかしさにまでは踏み込まないが、2015年に野党の国民連合政府構想を打ち出し、自衛隊活用論を復権させたことで、志位氏自身、私に自己批判を求めた論拠が間違いだと認めたようなものなのである。だって、国民連合政府はどう考えても安保条約が残っている政府なのに、その政府で自衛隊を活用するのだから(志位氏はついでに侵略しかしないはずの日米安保まで発動すると宣言した)。

 

 間違いを間違いと認められないことが、現在にいたる安保・自衛隊問題の大混迷を生みだしているわけである。ということで本論に戻る。

 

 そうやって志位氏は私に自己批判を求め、私は自衛隊違憲論を明記しなかったことに限って自己批判を行い、『議会と自治体』誌に掲載された。党の月刊誌で自己批判を載せるのは、不破哲三、上田耕一郎に続くという栄誉を頂いた。

 

 ただ、当時は、党の方針と違った見解を述べたとされる党員をこうやって批判し、自己批判までさせるということは一般的ではなかった。なぜ私がやり玉に挙がったかというと、私が書いたものが党の政策を代表したものだと捉えられかねない位置に私がいたからである。

 

 志位氏は当時、「僕が書いたことと一言一句異なることを書いてはいけない」という指導を私にしていた。けれども、そういう指導をする相手は、書いたものが党を代表すると思われる立場にある人間だけだったはずだ。私以外にそう指導されていた話を聞いているのは、国会議員だけだったと思う。国会議員の発言も党を代表すると思われるからね。

 

 他の人は問われなかった。たとえば、私の除名が問題になったとき、私を「かく乱者」だと批判する論文を発表した土井洋彦氏(現在、学術・文化委員会責任者)は、自衛隊活用論そのものに反対するという党の大会決定に反する考え方を持っていた。その見地で公然と私を批判していたが、大会決定に反するからといってとくに問題にされなかった。

 

 学術・文化委員会の傘下には学者・研究者の党員が少なくないが、22回大会の自衛隊活用論を公然と学者党員が批判しても、当時、土井氏が調査だや処分だに乗り出したという話は聞いていない。土井氏だって、自衛隊活用論に反対するという態度を変えたのかどうか知らないが、自衛隊活用論が復権した現在も、党の61人しかいない幹部会委員である。自衛隊活用論に賛成するのか反対するのか、アンケートでもされたらどう答えるのだろうね。

 

 ということで、当時、本当に自由だったのである。いまも本心を隠せば党中央も自由気ままなのだ。ところが現在、末端のヒラ党員の言論こそが監視されるようになっている。

 

 党中央が自由だと言えば、私を批判する論文を最初に「赤旗」に書いた藤田健氏も同じである。(続)

 

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