先月のオーストリアのザルツブルク市議選で、共産党が前回得票率(3.9%)を6倍化し(23%)、共産主義運動の内部では注目を集めた。その際、「赤旗」も吉本博美記者(いまはベルリンにいるんですね)が報じたが、今回、ザルツブルクに現地取材をした記事が、昨日の「赤旗」1面に載っている(画像)。3面も半分以上を使った記事になっている。

 

 1面のタイトルは「共産党なぜ躍進」で、3面も「ザルツブルクで共産党なぜ躍進」と問いを立てている。いまどき、そんな共産党はとんとお見かけしないわけだから、誰だってそれが知りたいだろう。

 

 1面では、「住宅危機 資本主義破綻示す」となっていて、政策的にはこの問題で住民の支持を得てきたことが書かれている。実際に住民が困っているという問題もあるのだが、ここの共産党はこれを「利益優先の資本主義が住宅問題によく表れている」として、共産主義政党ならではの存在意義がこの問題で示せたことを勝因に上げているようだ。この問題は、同じ共産主義政党であり、資本主義の限界を指摘しつつも、実際には資本主義の枠内での改革を訴える日本の共産党にとっても、十分に考えねばならないことである。

 

 3面では、より具体的な党活動が解説される。ここも興味深い。以下の小見出しだけでも中身がわかる。「助け合いの精神 実践」「対話と生活支援を重視」「党員の自発性を後押し」。

 

 「選挙は日々の党活動が国民に響いているかのテスト。これまでどれだけ外に出て、一人でも多くの市民と対話し、生活支援をしてきたかが一番大切です」。ザルツブルクの党代表の言葉であり、頭が下がる。

 

 週に何回も街頭や戸別訪問で聞き取り調査や宣伝をしているそうだ。大事なのは、月に一度、事務所を開放して行う無料の炊き出し。これは、党員一人ひとりに興味関心や何をしたいかを聞き出したところ、料理好きの党員がいたので、その党員にやってもらっているとのこと。「党員の自発性を後押し」という小見出しは、そのことを指している。

 

 議員報酬の半分は生活困窮者への寄付に当てるというのも、日本ではなかなか想像できないことだよね。日本でも議員は寄付をするけれど、相手は党そのものだから。一概には比較できないかもしれないが、オーストリアでは「政治家なのに給料が私たちと同じ」「他の政党と違う」と評価されているそうだ。

 

 私が知りたかったのは、そういう活動をする党の組織運営だが、記事のなかで党規約に触れているのは「議員や公職者による寄付が明記されています」ということだけである。そこで、オーストリア共産党のホームページに飛んで、規約を眺めてみることにした。ドイツ語なんで、学生時代にかじっただけなんだけど。(続)